吟遊詩人の物語

▼書込み 

01/17(Wed) 01:35
イノセントレア
橘 鷲聖

三日月の輪郭は
雄弁になればなるほど
おそろしい静けさを湛える
こうして乱れたシーツから
片足を投げていてもだよ

無造作に置かれた鏡に映り
残り香の滴りをまだ信じていたい
何もないはずの掌に拳銃ほどの重みを感じている
耳鳴りは此処ではない何処かに
繋がっていたんじゃないかと

おまえの滑らかな髪の光沢は
波打ち際が彷徨っているようだった

無心の冬は
雪を踏む音を聴いている
もう帰らないひとを待つ人は
忘れていった煙草に火をつけて
降り積もる目眩のなかを

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