短編小説
□Merry X'mas!!
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年に1度のクリスマス。
店は華やかなイルミネーションで彩られ、定番のクリスマスソングがあちこちで流れている。
そんな街中で、俺は恋人のことを待っていた。
「…遅ぇ」
時計を見ると待ち合わせ時間はとっくに過ぎている。
自分から誘ったくせに遅れるとはいい度胸じゃねぇか忍足よぉ…?
そんなことを思いながらも帰らないで待っている自分は、らしくないと思った。
こんな寒空の下、人混みの中で待つなんて前は耐えられなかった。
でも今はこうして待っている。
「こんなに待つなら手袋してくればよかったぜ…」
外気に触れて冷たくなった手を暖めようと息を吹きかける。
息は真っ白で、そろそろ雪が降りそうだなんて思う。
ふと辺りを見渡すが、忍足らしき姿は見えない。
「…いつまで待たせやがんだアイツ」
いい加減我慢の限界だ。
ポケットから携帯を取り出し電話をかける。
しかし電話は繋がらず、留守電サービスに接続された。
「うぜぇ」
ポケットに携帯を戻す。
また辺りを見渡していると、カップルしかいないことに気付いた。
今俺はかなり浮いている。
―――男一人でいる場所じゃねぇよ‥。
今更気付いても遅い。
しかし移動するわけにもいかず、その場にとどまる。
何度携帯を見ても電話がかかってくる様子もなく。