●恋愛小説●

□契―チギリ―第一章始まりの時空
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「いずれこのような事態になることは、分かっておった。そして、我らのすべきことも…こうなる前に、お主等とはじっくり話しがしたかったものよ」
 少女がそう言うと、五人は不安げな顔で少女を見た。
「時歌様…、これからどうするおつもりなのですか?」
「地木、色々すまなかった。お主は、いつも私の側にいて、私を守ってくれていたな。お主の地の力がなかったら、我ら天神族は、影で生きることは出来なかっただろう。感謝しておるぞ」
「はっ!」
「暗鬼」
 少女は、男の方を見て言った。
「暗鬼、お主はいつも冷静な判断で、私を助けてくれた。少々、残忍なところがあるが、お主の闇の力は本物だ、誇ってよいぞ」
「はっ!」
「光明」
 少女は、隣の女に向かって言った。
「光明は、女ながら五人衆、皆に負けぬ力でがんばってくれた。尊敬に値するものよ。主の光があったからこそ、天神の者はついてきてくれたと思うぞ」
「はっ!」
「流甲斐」
 少女は、その隣の男を見た。
「流甲斐、お主の水芸で、私は何度笑顔になったか。その明るさ、そして流甲斐にしかないその熱意、絶対に忘れるでないぞ。大切にするがよい」
「はっ!」
「そして…夢想」
 少女は、五人の中で一番小さい女子を見た。
「夢想は、幼い上に女という身であり、つらいこともあっただろう。お主の純真、無垢な笑顔に勝てる者は、五人衆…いや、誰もおらぬと思う。そして、お主の夢の力…一番好きだぞ」
「っ…!」
「泣くでない、夢想」
「はっ!」
 女子は、泣きながら頭を深く深く下げた。
「時は、きてしまった。我は、お主等を死なせとうない」
 少女の言葉に、五人は驚きを隠せなかった。
「時歌様!?」
「天神の者、死ぬ必要がどこにあるか?けれど、そううまくいくことも…もう無理よ。お主等…我についてきてくれるか?」
 少女の笑顔をしばらく五人は見つめていた。そして、五人は当然のように笑顔を見せ、深く頭を下げた。
「我ら五人衆、いや天神の者、皆あなた様に…姫様についていく覚悟でございます」
 地木という男がそう言うと、少女は立ち上がった。
「有難う。お主等には、感謝してもしきれぬな。今宵の月は、我らを祝福しているように見えようか。時空を越えるには、絶好の月夜よ」
 少女の言葉に、五人は困惑した。
「時空を越えるとは、どういう意味なのですか!?」
 地木がそう言うと、少女は笑顔で星空の下に立った。


「時司る天神の力よ、未となり、転化せよ」


 少女がそう唱えた瞬間、世界が光に包まれた。
             
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