●恋愛小説●

□夕暮れの日時A(作成中…)
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――――勘違い――――

「おい」
「わっ!」
 私は驚いて思わず、持っていた皿を落としそうになった。振り返ったら、突然目の前に道隆の微妙に不機嫌そうな顔があったのだ。私は、皿をテーブルの上に置き、朝ごはんを順々に並べた。
「昨日、要のヤツから変なメール来たんだけど」
「え?」
「かなりタチの悪ぃ冗談」
「ああ、付き合うってやつ?」
 私が小さく笑って言うと、道隆は身を乗り出して、
「マジなわけ?」
 そう言った。
「なわけないでしょ。告白されただけ。返事はまだしてないわよ」
 私は何だか可笑しくなって、クスクスと笑っていた。
「だよなー、びびった。まじで。あれ、でもまだしてないって……もちろん断るんだろ?」
 道隆は広げられた朝ごはんに手を伸ばしながら言った。
「……さあね」
「さあねってお前…まさか、付き合う気なわけ?」
 口に入れたたくあんをボリボリ言わせながら言う道隆を見て、私は顔をしかめた。
「別に付き合う気はないけど……」
「なら、さっさと断れよ」
「……返事はいつでもいいって言ったもん」
「誰でもそう言うんだよ。でも本心は早く結果が知りたくてたまんないはずだぜ?」
 そう言って、またたくあんに手を伸ばす。
「まるでテスト結果みたい」
 私はため息まじりでつぶやいた。
「そんなもんだろ。要のやつ、何考えて菫なんかに惚れたんだか」
「むっとすること言わないでよ。これでも最近は男子に呼び出されるんだからね!」
 私はムキになって、道隆の額にデコピンをくらわせてやった。
「いってぇ!何だよ、お前もてるわけ?」
「もてる……ってわけじゃないけど」
「ん?」
「ああ、もう!どうだっていいでしょ!」
 私は軽く地団駄を踏んで、そのままおじいちゃんを呼びに行った。
 言えるわけがない。その呼び出しは告白なんかじゃなくて、ただの友岐の情報収集や、人伝えの告白に利用されてるだけなんて。当たり前といえば、当たり前なのだが、人よりかわいい友岐は男子にかなりもてる。もちろん喜美代ももてていたが、道隆という彼氏の存在が喜美代を雲の上の人物にさせていたようだった。それに比べ、明るい友岐は社会性もあり、現在彼氏もいない。男子に告白される条件はそろいにそれっていたのだ。
「どーせ、私はもてないわよ」
 自分で言って、しばらくすごく悲しくなった。
          
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