●恋愛小説●

□夕暮れの日時A(作成中…)
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「先輩、先輩!」
 隣を走っていた要が聞いてきた。
「要、私のペースに合わせなくていいよ。遅いでしょ?」
「そうでもないですよ、先輩見かけによらず早いから!」
「お世辞?」
「ノンノン。ほんとですって」
 要がそう言って、私の背中を叩いた。
「…ところで、先輩って好きな人いるんすか?」
「藪から棒ね。何で?」
「だって、もうすぐバレンタインじゃないっすか。本命あげる相手いるんですか!?」
 要がどこか楽しそうに聞いてきた。
「失礼ねえ、いるわよ、それくらい!」
「やっぱ、俺!?」
「なんでっ!?」
 私が即答で言うと、要はショックを受けたらしく悲しげ顔を浮かべた。
「分かってますよ…んじゃ、やっぱり道隆先輩っすか?」
「え?」
「好きなんでしょ?道隆先輩のこと」
「な、なんで?」
 私は少し動揺して聞いた。
「見てたら分かりますよって」
「あはは、まじで?でも、それ昔の話よ」
「えっ?はっ!?」
 要がかなり驚いたのか、目を丸くして私の方を見る。
「そんなびっくりする?」
「え、なんで昔!?だって道隆先輩も菫先輩のこと好きでしょ!?」
「よく知ってるね。うん、でも付き合う気とか全くないの。今はホント友達としての好きだからさ」
「ほ、ほんとっすか!?」
「だから何でそんなの驚くの?」
「え、だって…その…」
 すると急に要が口ごもった。そして、足を止めた。
「どうした?」
 私も足を止めて、要の方を見た。
「あー、もう、こんなことなら早く言っておけばよかった!」
 頭を掻きながら、うずくまった。
「え、何をよ?」
「あーもー俺、言っちゃいますよ!!」
 要はそう言うと、立ち上がった。
「だから何を!?」
「正直俺、菫先輩に惚れてます!初めて会った時から! めちゃくちゃ!」
「は?」
 私は思わず間抜けな声を出してしまった。目の前では、顔を紅潮させ、私の方を真剣に見ている要がいた。
「…冗談でしょ?」
「冗談なんかでこんなこと言えますか!本気ですって!今日だって、俺菫先輩がテスト前も走ってるって聞いて来たんすから!!」
「嘘…」
「だから嘘じゃないって!」
 要が半分いらつきながら叫んだ。
「し、信じられない!だって、要いつも嘘つくじゃん!」
「っく!だったら…!」
 要はそう言うと、ポケットから携帯を取り出した。
「あ、あんた携帯入れて走ってたの!?」
 私の言葉を無視して、携帯を開いた。
「ちょっと、無視!?」
「……っはい!」
 要はそう言って、携帯を閉じた。
「え、何したの?」
「今、道隆先輩にメール送りました!菫先輩と付き合いますって!」
「う、嘘!?」
 私は驚いて要の手から携帯を奪うと、送信メールを見た。
「ほ、本当に送ってるし…」
 私は唖然として呟いた。
「これで信じてもらえたでしょ!?」
「信じた!信じるけど、コレ何!?付き合うって!!私返事してないんだけど!」
 すると要は最初首をかしげて、それから思い出したように、
「あっ!!?」
 そう言った。
「馬鹿じゃないの!?」
「だ、だって!!」
 要はおろおろしながら言った。
「…これじゃ、道隆誤解するよ」
「でも…俺、本当にそうなればいいって思ってますよ」
「え?」
「駄目ですか、俺じゃ?」
「え、いや、駄目とか、そんなことないけど…」
 私は困惑した。
「んじゃ、俺のこと本気で考えて見てください!返事はいつでもいいです!待ってますから!じゃ!」
 要はそう言って、ダッシュで部室に帰って行った。
「え、ちょっと、何よ…嘘でしょ?」
 すると、私の手に持っていた携帯が震えた。
「あ、忘れてた」
 背面を見ると、道隆からメールが来たらしい。私は気になり、悪いと思いながらもメールを開いてみた。
『嘘つくな。馬鹿』
「だよねえ…」
 私は思わず呟いてしまった。
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