REBORN!

□誰か止めて そして殺せ
1ページ/1ページ



泣く彼女に、ベルはただ鋭い刃を突き付けることしか出来なかった。

泣かせたのは自分で、慰めなければならないのも自分のはずだ。
そう彼は思うのに、身体はそうは動かない。
殺せ殺せ殺せと、そう彼の脳は命令している。

身体は知っているのだ。

大切な人を殺した時の快感を。
あの双子の兄を、瓜二つの兄弟を殺した時のような。

自分を信じて無抵抗な人間を、手に掛けるのを。
あの透き通った瞳が、絶望に歪む瞬間を見るような。

眩暈がした。
ごくりと喉が鳴る。
ナイフを持つ指に異様なくらい力が入って、そうして。

ベルはナイフを振り上げた。



誰か止めて
そして




カタカタと震える手。
真っ赤に染まったナイフがカラリと地面へ落ちた。

「……また、壊れた」

ベルは震える身体を気にする様子もなくつぶやく。
勿論その声も震えていた。

「壊さないようにしてたのになぁ」

確か誰かに、お前は忍耐が足りないと言われた覚えがあった。
けれどそれは仕方のないことだ。
彼は「我慢」を学ぶ機会がなかったのだから。

少し前まで人間で動いていた生き物は、今はただの肉の塊になっている。
ベルはそれをじっと見つめて身体の震えが治まるのを待つ。
そして時計の長い針が一周する間、彼は動かなかった。
そして震えも治まった頃。

「お前が、悪いんだからな」

それはまるで聞こえない悲鳴のよう。

「お前がすぐに壊れるからいけないんだ」

世界を学べなかった少年の言葉は、誰に聞かれることもなく空へ消えた。



fin...





大切なものを壊すのが癖。
壊れないものを愛せないベル。

誰か止めて、そして殺せ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ