短編集 (赤×橙)

□ごまかしの結果
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Side 赤

その日は動画の企画で、グループとスタッフはみんなで遊園地にきていた。

遊園地の敷地内に隠れたキンキラ衣装の海人を、グループに別れて観覧車に乗って探そう、というもの。

企画説明のあとは、俺・松倉・しず、しめ・のえる・元太のグループに分かれて観覧車に乗った。

3人でゴンドラに乗った後、松倉は一生懸命な目をして、双眼鏡をのぞいている。集中している時の癖で、口がぱくっと開いている。
俺はそれに気づいて笑ってしまう。

遊園地は広くて障害物も多いので、なかなか海人は見つからない。そのままゴンドラが一番上に到達したころ、しずがふざけて騒ぎ始めた。

「あ、いま一番てっぺんだぞ!お前らキスしろ〜」
「はあー?」
「デートのお決まりじゃん!キース、キース」

もちろんしずは俺と松倉の関係を知らない。
だから、しずの性格的に場を盛り上げようとして、ふざけて言ってるんだとは理解していた。
でも一瞬、後ろめたさを感じた俺はつい過剰反応をしてしまい、

「男同士のキスなんて誰が見たいんだよ」

と、冷たい言い方をしてしまった。
平静を装おうとつい声のトーンを下げすぎた。
ふつうにいつもみたいに、ふざけて適当にやり過ごしたらよかった。

しずも俺の予想外の冷たいリアクションにしゅんとなっててしまった。
すごく申し訳ない、、別にしずは悪くないのに。
ごめんね、しず。

ただ俺はこの時、実はしずでなく松倉のほうが傷ついたような表情をしていたことに、全く気づかなかった。
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