短編集 (赤×橙)
□安心感
3ページ/3ページ
「うん、いいよ」
俺は答えて、ちゃかの気が済むまでその体制でじっとしていた。
無言の時が流れて、ふと腰に回る手の力が緩まったので耳を澄ましてみると、スースーという寝息が聞こえた。
頬も肩からずれ落ち、全体的に俺の背中に寄りかかる形で眠っている。
えっ猫みたいでかわいい、、
俺は思わず笑ってしまって、でもちゃかが体制崩して起きないように、しばらく微動だにせずにいた。
体幹鍛えててよかった!
「ん〜 あ、ごめん、、一瞬寝てた」
変な体勢だから数分くらいで起きたちゃかは、ようやく俺から身体を離しながら言う。
「いいよ、相当疲れたんだな」
「わりと緊張してたからかな、全然体の方は大丈夫なんだけど精神的に」
「そっか」
「うん、だからいますっごい落ち着く、、」
ちゃかはまた俺に抱きついてきた。
なんか疲れてるちゃかっていつもより甘えが出てかわいい!
こんなこと思ってしまって悪いけど。
「昨日の電話、なんかあった?」
「いや、別に、声だけでもーと思ったんだけど。お前おそくまで練習してるって海人がいうから心配になって」
「え、俺のことなんか心配しないでよ。ちゃかって人のことばっか気にしすぎ」
「うん、でも会えたからいまようやく落ち着いてる。たらこの良い匂いするし。お前、自分は嫌いなのに作ってくれたんだよね。ありがと」
ちゃかがまた甘い顔で笑ってくれて、久しぶりのその笑顔に俺は胸がぎゅってなった。
照れ隠しの方法がわからないから俺は速攻で背向けてテレビつけて、でもやっぱりバレててちゃかに笑われて、また後ろから抱き寄せられる。
こんな幸せを実感できるチャンスになるのなら、時々会えないのももしかして悪いことじゃないのかもと俺はドキドキしながら思ってしまったのだった。