黄昏時忍軍忍組頭の嫁は少し無愛想

□宿縁、宿怨、てつはうもの
2ページ/3ページ


「くのいちでも連れて来たのか。」

 きろ、と照星の黒目が動き、雑渡を捉えれば、その黒目に映る姿はひょいと肩をすくめる。

「ある意味では正解だね、さく」

 雑渡の言葉に小さく頷いたさくは目の前の、憮然としている照星に頭を下げた。

「お初に御目に掛かります。雑渡昆奈門が嫁、さくと申します」

「そうですか、雑渡の………………嫁?」

 静かに頷き、それを納得したかに見えた照星が不意に刮目(かつもく)する。

「貴女が、」

「はい」

「こいつの、」

「はい」

「嫁ですか」

「はい」

「…………」

 照星はさくと雑渡を交互に指差しながら言った。
 彼女の肯定を聞き、暫時(ざんじ)、絶句したかの様な表情を浮かべる。

「嫁ですか」

「はい」

「…………嫁ですか」

「ちょっと、何回聞くんだよ照星。」

 雑渡が呆れた声を出す。
 しかし、照星はなおも奇妙なものを見るかの様な顔で、さくと雑渡を見比べている。

「雑渡、何の冗談だ」

「いや、本当だからね」

「お前がかようなおなごと妹背になれるのなら、その辺の野良犬とておなごと番えても可笑しくはないぞ」

「…………お前の中の私の認識ってどうなってるの」

 ようやく届いた、冷えた葛切りに手を着けながら雑渡はげんなりとそう言った。

「なんで、どいつもこいつも、似たような反応なのかねえ、さく」

「……さあ」

 不意に振られるもどう答えれば良いか分からず首を傾げれば、髪をするりと雑渡の手が撫でる。

「うん、さくに聞いても仕方無いか」

「人目があります故お止めください」

 その手を軽く払えば、雑渡は小さく溜め息を吐く。

「まあ、良いや。本題に入っても良いかい?」

 照星を見れば、茶を一口すすり、かたりと湯のみを卓に置いた。

「……」

 照星の目線がさくに向けられる。

「あ、大丈夫。聞かれても構わないから」

 ひらひらと手を振る雑渡に照星は眉間のしわを深めた。

「随分と気を許しているようだな」

「そりゃあ、私のお嫁さんだもの」

 皮肉の混じった言葉にけろっと答える雑渡を見て、照星は呆れたとでも言いたげに目をきゅうっと細めた


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ