いしゃたま!
□これにて大団円
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捏造三反田家両親及び、オリジナルキャラ注意。
これは、彼女が再び忍術学園に戻る、その少し前の物語。
「ちょっと、父様!そんな姿勢して大丈夫なの?」
朝早くから庭の草をむしっている父様に声をかければ、父様はにっかり笑いながら腰を伸ばして見せた。
「ほれ。この通りだ」
「あんまり、無理はしないでくださいね」
「心配するな。それにしてもこりゃあ良く効く薬だな。後で配合を教えてくれるか?」
私は頷いた。
父様の薬の配合は、善法寺君が考えたものだ。以前彼から作り方を教えて貰っていた。
「手伝いましょうか?」
「時期に終わる。水でも酌んできてくれ」
「分かった。今湯冷ましを、」
「ちどり」
父様が私を呼び止める。振り返れば優しく笑う顔。
「もう、大丈夫だぞ」
「……」
私はそれに曖昧に笑った。
あの一連の出来事からもうすぐ一月が立とうとしている。
父様が私を学園に送ったのは、婿探しでもなければ、医者の修行でもなく、私を守る為だったのだ。
そうして、学園の手助けにより、大騒動を経て、全ては終息した。
私が学園にいる意味は無くなった。いや、それどころか、数馬に怪我までさせて、学園の皆を危険な事に巻き込んだのだ。
私はもうこの場所にはいるべきではないだろう。
そう思った私に、学園長先生が提案されたのは、無期限の休職だった。
良く考えなさいと言われ、私は、父様、母様の元に帰った。
良く考えた結果は、
……私そんなに悪くなくない?
である。
開き直りかもしれない。でも残ったのはこの一つだ。
私も、誰も悪くない。
どうすることもできない事をとやかく言っても仕方がない。
考えは纏まっている。
でも、だからといって、はいじゃあ復帰します。なんて気楽には言えなかった。
それほど、あの事件は、初めて知った私の出自は、私の中に重くのし掛かっている。
私はどんな顔をして、皆に会えばいいのだろうか。
また皆と笑い合うことなんて本当にできるのだろうか。
「はい、父様」
「うむ」
ぐびぐびと喉を鳴らし、湯冷ましを煽る父様の額に汗が光った。
今日も日差しがきつい。
当然だ。もう文月なんだから。
「あらっ!まあ、貴方は……」
家の戸口の方角から母様の驚いた声が聞こえた。
誰が来たのかと私と父様も急いで向かえば、
「やあ、ちどりちゃん」
「雑渡さん!!」
傘の下で、隻眼が私を見下ろした。
「幕を下ろしに行くのに付き合ってくれないかな?」
雑渡さんはにこりと笑いながらそう言った。
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