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□私と遊園地に行こう!
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「まずは絶叫マシーンだな!!!」

「却下!!!!」

私の全身全霊の拒否を無視して、七松小平太はぐいぐいと腕を引っ張る。止めろ。服が伸びる。

「私はなまえと思いっきり叫びたい!」

「あんた絶叫マシーンごときで叫ぶ玉じゃないでしょ!!ってウォータースライダー!?アホか!!!」

ずるずると引きずられていった先に私は驚愕する。こんな寒い日に何考えてんのよこの暴君!!

「……駄目か?」

「う……。」

いきなりシュンとしないで頂きたい。
尻尾を下げた子犬みたいなその顔に、悔しいことにきゅんとしてしまう。

「……あれなら良いよ。」

大袈裟なまでに大きく揺れている舟のアトラクションを指差した。

「っ!!」

ぱあっと小平太の顔が輝く

「よし行くぞっなまえ!」

「ちょっ!おまっ!!」

さっきのしょんぼりは何処いったよってくらいの勢いで走り出した。

「早く来いよーっ!!」

ああ、しまった。乗せられた気がする。








「……い、意外とキツかった。」

地面がまだ揺れている気がする。
小平太はへたりこんでいる私をじっと見て、ぐるっと踵を返した。

「あっ……」

まさしくあっという間に、彼は走り去って行ってしまった。

「なんだよ。もう。」

何時もそうだ。勝手に行ってしまう。
私は着いていくのに必死だってのに。

小さな冬の遊園地は、人が少なくて物寂しく見えた。いかんいかん、暗くなってしまう。自分を諌めながらも、頭は重力に従い下がっていく。

「なまえ。」

頭上に降る声。

上げてやるもんか。
変な意地が出た。なんでもかんでもこいつのペースに乗せられたくない。

「なまえ。」

「……。」

「なあ、なまえ。」

「……なに。小平太。」

ああ、私の馬鹿。二の舞だ。
しゅんとしたしょげた声につい顔を上げた。

「飲めよ!」

にこっと嬉しそうな顔で差し出されたのは、

「…ありがとう。」

「なまえ、ココア好きだろ。」

ほかほかと湯気の立つ甘い飲み物。

素直に受けとれば、益々嬉しそうに笑う小平太についついこちらも顔が緩む。







「ねえ、あれなんだろ。」

気を取り直してパーク内を彷徨いていると、キラキラとした大きなツリーが見えた。時期的にはあっても可笑しくないんだけど。そこには可愛らしい鈴の形のカードがたくさんぶら下がっている。


「約束のベル……また来年もこの地を大切な人と訪れられますように、カードに願い事を書いてツリーに飾って下さいだって。」

「ふーん。」

なんともロマンチックだ。
ツリーに飾ったカードを見れば、やはり殆どがカップルのもので、「ずっといっしょ」とか「大好き」とか「来年結婚します」とか……

「……いいなあ。」

「そうか?」

「ねえ、小平太。書いてかない?」

「え?嫌だ。」

嫌だっておま……まあ予想はしてたし、駄目元で聞いたけど結構ショックだ。


「あんなん必要ないだろ。」

また俯いてしまった私ははっと顔を上げる。

小平太と目が合えば、にっと歯を見せて笑った。

「約束なんかしなくたって。私となまえはずっと一緒だ!!」

ぎゅっと大きな手が私の手を握る。

「……馬鹿。」

「ああ、知ってるぞ!」

繋がれた所から熱くなってくる。
彼が馬鹿なら私は大馬鹿だ。

「次はなまえの好きな奴にしよう!」

「じゃあ、お化け屋敷。」

「却下!!!!」

青ざめた彼に私は笑う。

今度は私が引っ張る番だ。


私と遊園地に行こう!

拍手ありがとうございます。小平太と冬の遊園地のお話でした。




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