いしゃたま!
□まさかの再会、赤色眼鏡の再来の再来
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「…………」
「…………」
「…………」
何ですか、これ。
凄い気まずい。行きより遥かに気まずいです。
照星さん、私、善法寺く、いや、伊作君と三人で学園への帰路に着いている訳なんですが、全員無言、そして、一定に開いた距離。
ちら、と後方の伊作君を振り返って見れば、遠慮がちな微笑みが返って来た。
そして、ふと、視線を感じれば、無表情の照星さんが此方を振り向いている。
あの、何ですか。その分かっていると言いたげな頷きは……。
えーと、今までの事を整理しようかな。
伊作君が、私の事を、その…………好いてくれていて……私は私で彼を好いていて、それで……………………って、
「……あれ?」
「どうしましたか?」
不意に立ち止まった私と伊作君の間合いが少し詰まる。
怪訝な面差しが覗き込むように近づいて来て、かっ、と、顔が熱くなる。
「なっ、ななな、なんでもないでっす!!」
慌てて前へと歩き出したら、あの、だから、照星さん!自分は邪魔しないでおこうみたいな雰囲気で歩みを早めないで下さいよ!!
……私が思い至ったのは、冷静になってみればこの状況は少し不味いのでは、という事だ。
私は、今、学園の職員、そして、伊作君は最高学年とは言えまだ学生だ。
学生と職員同士だなんて、風紀的に如何なものか。
伊作君が卒業した後ならまだしも、
「ってなに考えてんのよっ!!」
「ちどりさん!?」
思わず頭を抱えて叫んでしまった。此れでは只の変人だ。
照星さんも、呆れた表情で私を見ている……その時だ、
「……善法寺君」
そう言った照星さんの、潜められていた眉がひくりと動いた。
目に鋭さが籠ったように感じた一瞬、ぐいっと伊作君が私の腕を引く。
「えっ!?」
ガキンッ!と、鋭い金属音が聞こえた。
突然、林から飛び出してきた男の刃を伊作君の苦無が受け止めるのを、彼の背中越しに見た。
汚れた着物に人相の悪さ、どう見ても山賊の類いだ、そんな男達がぞろぞろと出て来て私達を囲む。
「ちどりさん、僕から離れないように、」
「う、うん!?」
「なっ!?」
いきなり風の様な獣の様な人影が私の身体を抱え上げた、視界が揺れる。
あっという間に景色が反転し流れていく、
「ちどりさん!!」
善法寺君の悲痛な声が遠ざかっていった。
「ちょっと!離しなさいよ!!って、おう!?」
命の危険があるかもとも思いながらも足を振り回して抵抗を試みれば、どさりと地に転がされる。
「……!?」
ばっと顔を上げて私を抱えていた男を見上げれば、其処には見覚えのある顔がある。
「あ、あんたは、あの、」
「…………海松万寿烏だ。久しぶりだな、嬢ちゃん。」
にやりと笑う男、暗殺者、海松万寿烏を私は呆けた顔で見上げていた。
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