いしゃたま!
□向かう先は綺羅綺羅と光る
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「ちどりさーん!」
善法寺君が課題の為に出立したその翌日の昼過ぎの事。
何時ものように干していた布団や手拭い、包帯を取り込んでいる私に駆け寄ってくる十一人の子供達。
「乱ちゃん、皆、どうしましたか?」
一年は組のよいこ達がにこにこと笑いながらずらっと並んでいる。
「「「明日僕達と海に行きましょう!」」」
「……うん?」
綺麗に揃った声に首を傾げる私である。
「学園長先生からは許可を頂いてますから大丈夫ですよ!」
「いやいや、庄左ヱ門君、話が見えないのだけれど」
そこから、口々に話し出した彼等の発言を繋げて要約すると、
明日、一年は組の皆は、兵庫水軍さんという学園と懇意にしている海賊の所へ校外実習に出かけるそうだ。
引率には担任である土井先生、山田先生が行くのだが、そこに私も着いて来て欲しいらしい。
というか、もう既に学園長先生に話を持っていって了承済みだとかなんとか。
「それって、私が行っても良いの?」
「「「「勿論です!」」」」
「ちどりさん、最近元気が無かったから、皆で相談してムググ、」
「ちょっとしんべヱ!!」
「それは内緒にしとくんだろっ!!」
しんべヱ君の口を押さえながら一斉に慌て出す彼等に思わず苦笑した。
一年生の子ども達にまで気を遣われてしまって我ながら情けないと思うと同時に、彼等の心遣いが暖かく嬉かった。
「新野先生ももうすぐ休暇を終えられる。ちどり君は此方は気にせず見聞を深めて来ると良いじゃろう」
「学園長先生!」
何時の間に現れたのか学園長先生が私の横で、にかりと笑っている。
「一年は組の諸君も良く学んでくるように……ついでに帰りには美味い魚を貰って来て欲しいのお」
「つーか、学園長先生はそっちが本音っしょおぼっ!!?」
きり丸くんの脳天に学園長先生の杖がごつりと振り落とされた。
「ってえぇ……!」
「きりちゃんたら一言多いんだから」
乱ちゃんが苦笑しながらきり丸くんの頭を撫でてあげていた。
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