いしゃたま!
□彼の頼みと彼女の心情
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学園は夏休みの真っ只中。
とはいっても、残っていたり、戻ってくる生徒はちらほらいる。
夏休みがまるまる補習授業になっちゃった、一年は組の良い子達。
課題で怪我を追って療養中の五年ろ組の竹谷君。とはいってもすっかり回復して、休憩中のは組の子達の遊び相手をしていたり。
課題を提出しに戻ってきた同じく五年ろ組の不破君も、残りは学園で鍛練して過ごすそうで、そうなったら何処から聞き付けたのか、昨日に鉢屋君が戻ってきて今日も二人で仲良く鍛練や勉強をしているみたい。
課題は大丈夫なのかと思ったら、そこは抜け目なく完璧に仕上げて提出していたようだ。
ああ、そうそう。久々知君もこの間、帰ってきていて、何故か毎日豆腐作りに明け暮れている。
一緒に帰ってきた尾浜君にそれとなく聞いてみたら、課題があまり上手くいかなかった鬱憤晴らしとのこと……毎日それを食べてる五年の面々はげんなりしている。
五年生はこんな感じ。
四年生達は店の手伝いがあるタカ丸君以外は皆、早々に課題を出しに来て、後はそれぞれ思い思いに休暇を過ごしているそうだ。浜君は曾祖父ちゃんと修行だって張り切っていたな。
まだ下級生の三年生、二年生、は組以外の一年生達はそれぞれ実家に帰って家の手伝いをしたり家族とゆっくり過ごしたり、普段は家族と離れて生活している分、長い休みを満喫しているだろう。
それで、六年生はというと……正直良く分からない。
いた、と思ったら三日程いなくなったり、戻って来たと思ったら直ぐに出ていったり。
顔触れも入れ替わり立ち替わりだ。一昨日は潮江君が疲れた顔で戻ってきて、額を腫らしていたから何事かと思ったら自分で頭突きをしただけらしい、なんなんだいったい。
で、その潮江君も今は鍛練だとか何かで裏裏山辺りに籠っている様だ。
「まあ、六年生にとってはこの夏休みは大事な期間ですから」
一番良く顔を見る善法寺君にそれを言えば、そう、答えが返ってきた。
そして、私、忍術学園保健医助手、三反田ちどりといえば、その善法寺君のお見送りをしている所である。
何だかんだでずっと保健室にいたような彼も、当然ながら課題をこなしに行くそうで。
私も薬草園に行きがてら、正門まで一緒に歩いている。
「怪我には気をつけて下さいね」
「大丈夫ですよ」
夏の朝の日を受けながら彼はふわりと笑うが、私はどうも笑い返す気にはなれない。
正直心配なのだ。そんな私を見下ろした彼の笑みは苦笑に変わる。
「ちどりさん、もしかして、僕の不運を心配してます?」
「心を読まないでください」
私も漸く苦笑を浮かべた。
短い付き合いではあるが、善法寺君の不運は特異体質の域に達していると私は思っている。
学園内で一日過ごしただけで全身ぼろぼろになる時だってあるのに……まあ、同時に悪運が異常に強いのも良く知ってはいるんだけど。
そうこうしている内に、正門が見えてきた。
「じゃあ、いってらっしゃい、善法寺君」
「はい、行ってきます……、あの」
「うん?」
正門を背後に善法寺君が私に向き合う。
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