いしゃたま!

□彼女の進言、そして、合戦顛末
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 保健委員会の皆から予算案を受けとり、会議の会場に戻れば、

 そこは、さながら地獄画図でした。



 バレーボール、砲弾、炮烙火矢、生首フィギュア、図書カード、漆喰、ムカデ、トカゲ

 空中を様々な物が舞っている。


「わはははは!!全く効かんわヘタレ委員会どもめえっ!!!」

 潮江君はそれを、次々に避けたり弾き飛ばしたりしている。なんで、そんなに楽しそうなんだろう。

 いや、潮江君だけじゃない。周りの委員会の子達も、顔は真剣だけど妙に楽しそうだ。

「こ、これはいったい……」

「そういや、予算会議のもう一つの意義を言ってなかったな」

 いつの間にか背後に鉢屋君と尾浜君が並んで立っている。

「もう一つの意義って?」

「期末試験前の鬱憤晴らしですよ」

 爽やかな笑顔で尾浜君が言う言葉に軽い目眩を覚えた。
 その鬱憤晴らしとやらのせいで、安藤先生の部屋が半壊してしまっているじゃないか。

「ちどりさんが持ってるのは、保健委員会の予算案ですね」

 この、すっちゃかめっちゃかな状況に司会を諦めたのだろう、庄左ヱ門君と彦四郎君が、此方に寄って来た。

「保健委員会の皆は今は喜八郎君の掘った落とし穴にいます」

「さ、流石というかなんというか」

 彦四郎君がひきつった笑いを浮かべた。

「だから、私が代理で潮江君と話がしたいんだけど……」

 うん、無理だなこれは。
 この激戦状態を突破していくなんて、絶対に無理!

「ふむ。そういうことなら、私達が助けてやろう」

「えっ!なに!?」

「尾浜先輩、鉢屋先輩!!?」

「何をなさるつもりですか!?」

 二人がかりで、ひょいと抱えあげられた。

「じゃあ、行くぞー」

「え、え?」

「潮江会計委員会委員長殿!!保健委員会代理人をお届けに上がりましたあああ!!!」

「ちょっとおおおお!?」

 そのまま、軽く助走を着けながら、勢いよく投げられた。
 私は猫の子か!!?

「ちどりちゃん!?」

「不味い!全員、攻撃を止めろお!!」

「潮江先輩っ!!ちどりさんが飛んで来ました!!!」

「なに考えてんだ学級委員長委員会!!?」

 訳も分からず投げ飛ばされた私の視界の端に、ばっと、左門君が腕を広げるのが見えた。

 どんと、左門君に体がぶつかる。二人一緒に部屋の中に転がり込んだ。

「神崎先輩!!」

「ちどりお姉さん!お怪我はしてませんか!!?」

「あ、ありがとう、大丈夫よ。左門君は?」

「僕は鍛えてるから平気です!!」

 にかっと笑う左門君。
 ま、眩しい笑顔だわ。将来は良い男になりそうだなこの子。

「いったい、何なんですか?」

 潮江君が呆れた顔で私を見た。

「お騒がせしてすみません。保健委員会代理として、予算案の異議申し立てに来ました」

 頭を下げれば、周りの委員会の面々がどよめいた。

「これは、急展開です!救護班及び特別審査員のちどりさんが、ここでまさかの保健委員会代理として潮江会計委員会委員長の前に現れました!!」

「かつて、潮江会計委員会委員長を言い負かしたとの伝説を持つ彼女、いったいどのような異議申し立てをするのでしょう。」

 庄左ヱ門君達は司会を再開した様だ。
 で、伝説って……。

「狡いぞ保健委員会!」

「……いや、まだ、勝てると決まった訳では、ない」

 周りは攻撃を止め、がやがやとざわめきながら、会計委員会室で、向かい合う潮江君と私を見つめている。

「一応、お聞きしましょう」

「一応」

 ちょっとむっと来たが、怒るのは早い。私は軽く深呼吸して、ばっと、予算案を潮江君の眼前に広げた。

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