いしゃたま!

□面倒くさい女
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 忍術学園に流れる不可解な噂、「三反田ちどりさんは土井先生に懸想している」は、私の不要な発言とくのいち教室の女の子達の好意が行き違った末の結果だった。

「本当にどうしよう」

 噂が静まるまでひたすら堪えるしかないかと思いながらもやはり気が重い。



「……ちどり姉さん。」

 夕方に数馬が夕飯に迎えに来た。
 朝と変わらず機嫌が悪い。溜め息が出る。

「数馬、夕飯の前に、姉さんと少し話をしましょう」

「……土井先生とのこと?」

 じとっとした目で私を見る。

「そうよ。でもねぇ、数馬。あれは誤解よ」

 事の顛末を簡単に数馬に話した。
 数馬は黙って聞いている。

「そうだったんだね。でも、」

「でも?」

「土井先生が好みな事は本当なんだね」

「もう。それは、強いていうならの話よ」

 まだそこに引っ掛かるのか、と苦笑した。

「もしかして、与助兄さんかな?」

「え?」

 ぎくりとした。そこは濁して話したというのに。

「な、何の話?」

「はぐらかさないでよ。何年、ちどり姉さんの弟やってると思ってんの」

 数馬はじっとこちらを見ている。

「まだ、忘れられない?」

「……さあ、」

 思わず視線を反らしてしまった。

「僕、今日は夕飯は良いや」

 そう言って数馬は出ていった。

「……最悪だ。」

 その場で頭を抱え込む。
 そうしていたって状況が変わるわけでもないのに。



 翌日は休日で、正直助かった。

 噂について弁解し続けるのも疲れてきたところだったし。

 かといって何もすることないし……。
 部屋にいても悶々としてしまいそうだから、今日も保健室にいる。

「本当、どうしよう」

 最近、私の口癖みたいになってるな。
 ぐるぐると、緩慢な手つきで薬を煎じている。
 渦中のもう一人である土井先生にも弁解したいのに、なぜか見つからない。多分避けられているのかな。
 忍者め、素人の私に対し卑怯だわ。



「あっ。しまった」

 ぼんやりしすぎて、薬を少し煮詰めすぎてしまった。

 急いで火から下ろす。
 慌てて鍋を動かしたせいで煮詰まった薬が手に跳ねた。

「あっつぅ!!」

 ちょっと火傷してしまった。

「……もう」

 はあ、と溜め息をつく。





「お困りのようですね、お嬢さん」


 突然、天井から声。

「……鉢屋君?」

「ご名答」

 鉢屋君が天井裏からすたんと部屋に降りたってきた。

「そんな嫌そうな顔するなよ。ちどり」

 ニヤニヤとした顔。悪いけど、今は鉢屋君の嫌がらせをあしらう元気はない。


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