いしゃたま!
□誤解というかなんというか
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ほぼ毎朝、朝食は数馬と食べている。
くのいちの学舎との境界まで数馬が迎えに来てくれて、今日も同じように連れだっていくのだが、なんだか今朝は数馬の機嫌が悪い。
何を聞いても、うん、とか、ん、とか短い答え。そして仏頂面。
何か嫌なことでもあったかなーとか、そろそろ難しい年頃なのかもなと思いながら、むすっとした顔で味噌汁をすする数馬を観察しながら、朝ごはんを食べた。
さて、保健室へ行こうと、廊下を歩いていると鉢屋君、不破君とすれ違った。
「はよ。ちどり、大変だなあ、ま、頑張れよ」
とにやにやした顔で肩をぽんと叩く鉢屋君。
仕事への労いにしちゃ、変な感じがするし、面白くて仕方ないって顔が少し不愉快で反応に困った。
「………おはようございます。ちどりさん」
で、不破君は何でそんなに暗いんだ。
体調が悪いなら早めに保健室に来なさいよと言ったら、暗い声で「大丈夫です」と返ってきた。
いやいやその暗さは大丈夫じゃないだろうと、怪訝に思いながら、廊下を歩き去る二人を見送った。
保健室で新野先生に挨拶をして午前の仕事に取りかかる。
新野先生もちょっと困惑しているような何か言いたげな複雑な表情をしていた。
そして、いつもは休み時間に来る善法寺君が来ない。授業が忙しいのかもしれないが。
薬草園で薬草をつみながら今朝からのことを振り替える。
「……いったい何なのかね」
気になることは多いが、考えても、思い付くことはなかった。
薬草園から保健室に帰る途中、善法寺君と食満君を見かけた。
「あ、おーい」
すれ違いながらひらひらと手をふる。
食満君は軽く振り返してくれたが、善法寺君は何故かふいっと視線を逸らされた。
怒っているような落ち込んでいるような変な顔をしている。
何だよそれ、と思ったが仕事中だったので、そのまま通り過ぎて保健室に戻った。
やっぱり朝から何かがおかしい。
薬研で薬草を磨り潰しながら悶々としていた。
そして、昼休憩の時、とうとう確信を得る。
昼食を終えて急いで新野先生と交代しようと早足で廊下を歩いているとき、土井先生とすれ違った。
「あ、今からお昼ですか?お疲れ様です」
「うっ、あ、ちどりさん!?」
土井先生、人の顔を見てぎょっとした表情。
「え?私の顔に何かついてます?」
「や、ちが……えぇと。その、うぅ……」
「土井先生?」
おいおい、何故、見るみる赤くなっていくんだ。
「しっ失礼しましたぁあああっ!!」
「は!?ちょっと!お昼食べないんですか!?」
回れ右をしてそのまま逆方向へ走り出し屋根裏へ飛び込む土井先生。
流石、忍者。
いや、感心している場合ではない。物凄く嫌な予感がする……。
「「「ちどりさああぁん!」」」
土井先生と入れ替わって、でけでけと廊下を走ってきたのは一年は組の良い子達。
「……どうしたの?」
何となくわかる気がするし、物凄く聞きたくないけど。
「「「ちどりさんは土井先生のお嫁さんになりたいんですか!!?」」」
「………は」
私は、絶句するしかなかった。
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