いしゃたま!
□お仕事開始
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「え?わ、私もこれを着るんですか……?」
「ええ、そうよ。今日は初めだから着方を説明するわね。」
おはようございます。ちどりです。
昨日は、数馬の学友と楽しい一時を過ごし、幸せな気持ちで眠りました。
そして、今朝は困惑してます。
……うぅやっぱり恥ずかしい。
今朝、シナ先生が持って来てくださたった服はシナ先生と同じ型の忍び装束。
「わ、私もこれを着るんですか?」
おずおずと聞くとシナ先生はにっこりと一言。
「ええ、そうよ。職員の制服だから」
仕方なくシナ先生に教わりながら着たわけですが、シナ先生や他の先生方の様に鍛えられた美しい身体をしている訳ではない私には似合わない気がして居心地悪い、というか恥ずかしい。
誰にも見つかりませんように……と早足で廊下を歩いていると、曲がり角で作兵衛君、左門君、三之助君に出会ってしまった。
「あ、おはようございます、作兵衛君。左門君、三之助君」
「おはようございます……ちどりお姉さん」
照れながらもお姉さんと言ってくれる作兵衛君。朝から癒しをありがとう。
「ちどりお姉さん。忍び装束に着替えたんですね。」
と三之助君。
「……そうだよ。恥ずかしながら、似合わない気がしますが、」
「そんなことないですよ!」
と左門君。うんうんと後の二人も頷く。優しいなあ。
「まあ、腕とか脚とかもう少し引き締めたほうが良いとは思いますけど」
「三之助!」
作兵衛君がぺちりと三之助君を叩いた。
いやいや、正直でよろしい三之助君。ちくしょう、ちょっと鍛えようかな……。
「ところで、気になったんだけど…その縄はなに?」
出会ってから気になっていたのだけれど、左門君、三之助君の腰にはぐるりと縄が巻かれてある。
そしてそれぞれの縄のはしを作兵衛君が握っていた。
「こうしとかないと、こいつらすぐどっか行くんで」
お、おお、成る程。しかし、二人はそれで良いのか。
「作兵衛がそうしたいって言うんだからしゃーないよなぁ」
「まったく仕方無いな作兵衛は!」
「お前らなあ……」
作兵衛君、苦労してるのね。
「いたいたちどり姉さん!」
数馬が廊下の向こうからやってきた。
「朝食に迎えにいこうと思って」
「僕らもご一緒して良いですか?」
「勿論です」
という訳で、ろ組の三人と数馬、藤内君と朝ごはんを食べました。
朝ごはんも美味しい。おばちゃんは本当に凄いなあ。
「おはようございます、新野先生。」
「おはようございます、ちどりさん。さっそくですが、こちらの調合をお願いできますか?」
「はい」
保健室で、新野先生と二人で薬を調合していく。
「傷薬と気付け薬ですね」
「ええ、午後は実技の授業が多いので何かと入り用なんですよ」
それが終わったら、包帯と布団の洗濯。
新野先生は部屋に残り、包帯を巻く仕事。
生徒の数が多いだけあって流石に数が多い。
「……血だらけだ」
中にはぎょっとするくらい血がこびりついた包帯がある。
これを巻いていた人はどれ程の酷い怪我だったのだろうか。
水を三、四回変えながら、汚れを落とし、物干し竿に干した。
「……あ」
物干し竿に下げられた包帯の向こう側に見知った人達が歩いているのが見えた。
「立花君と、潮江君」
潮江君とは昨日出会ったすぐに喧嘩腰になられて、私も私でそれに乗っかって、結局立花君が代わりにに謝ってくれたけど。
私も潮江君に謝らないとな……。
私自身も失礼だったと思いますし。でもなんか、気まずい。
もだもだ考えている内に立花君とばちっと目が合ってしまった。
「あ、お、おはようございます。立花君、潮江君」
うぅ……変な汗が。
「おはようございます。ちどりさん」
立花君、にこやかに、かつ爽やかな挨拶。
この人、女性にもてるんじゃないかな。町を歩けば若い娘が黄色い声を上げそうだ。って、私も若い娘か。
潮江君は、こちらをじとっと見るだけ。やっぱり、まだ怒っている感じですか。
「行くぞ仙蔵」
ふいっと視線を反らし、歩き出す潮江君。立花君が苦笑いしながらこちらに会釈している。
「あ、あの!潮江君!!」
思わず呼び止めた。潮江君はぴたりと止まるが、こちらを見ない。
「……昨日は、すみません」
「何がだ」
「え?」
「働きぶりを見ろとお前は言った。ならばこんなところで時間を潰さず仕事に戻ったらどうだ」
そう言って潮江君は再び歩き出した。
立花君は小さくすみませんと言ってそれに続いた。
「すみません。遅くなりました」
「いえいえ、早いぐらいですよ」
医務室に戻ると新野先生が巻き終えた包帯を棚に戻していた。
「お手伝いします」
「ありがとうございます。ちどりさんが来られる前は午前の仕事は私一人でしていたのでとても助かります」
「いえ、そう言って頂けて嬉しいです」
包帯を棚に直しながら、先程の潮江君とのやり取りを回想する。
考えようによっては。だ。
何がだってのは気にすることはないって意味にも取れる……よね?
「よし。もう気にしない」
「はい?」
「あ、いえ。何でもありません」
私は潮江君の言葉をとりあえず超前向きに捉えることにした。
そうこうしている内に、昼時の鐘が鳴った。
「お昼になりましたね。ちどりさん。私は午後に授業がひとつ入っていまして、その間の医務室をお願いできますか」
「はい。では新野先生はお先にお昼を
頂いてください」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて。ちどりさんも少し休憩してください」
新野先生が出ていった後、私もお言葉に甘えて、少し休憩させてもらうことにした。
「沢山、本があるな……」
保健室には本草学や、治療に纏わる本が沢山ある。
なかでもやはり興味を引いたのは、金瘡、刀や鉄砲による大きな外傷に対する処置が細かく書かれてある本だった。
「誰が書いたんだろう……あ、新野先生?」
表紙に書かれている名前を見て驚いた。
「忍術学園には、こんな怪我をする人だっているのかしら」
血だらけの包帯を思い出す。
私にも、できるだろうか。
とりあえず、内容を頭に入れよう。
本の内容に集中しようとした時。
「失礼します……え?」
「すみません……て、え?誰?」
男の子が二人入って来た。
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