いしゃたま!
□弟が増えました。
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「……という感じです。これで備品の説明は全てです」
「はい」
新野先生に保健室の大体の備品のいち、棚にある種類別の薬種を教えて頂いた。
私はそれを聞きながら帳面に書き留めていく。
「かなり多いですが、覚えられますか?」
善法寺君が心配そうに聞いてくる。
食満君は壁の修繕に行くといって、出ていっていた。
「まかせて、確かに家で扱うものより多いけど、記憶力には自信がありますから」
「それは頼もしいですね」
新野先生はにっこりと笑う。穏やかで優しそうな先生だ。
「仕事の内容ですが、主に生徒の健康管理と治療を……ちどりさんは怪我人の治療経験はありますか?」
「軽いものでしたら」
「ちどりさんは道中、僕の怪我の処置をしてくださったので大丈夫だと思います」
善法寺君が私の手当てした部分を新野先生に見せた。
「……失礼」
新野先生は善法寺訓の腕をとって、包帯をほどいてまじまじと見た。
おお……なんか緊張する
「申し分ない処置ですね。包帯の巻き方も綺麗ですよ」
「あ、ありがとうございます!」
身内以外の専門の人に自分の処置を見せたのも初めてなら誉められたのも初めてで、顔がかあっと熱くなる。
なんだろう。凄い嬉しい……!
「私は出張が多いので、不在の時の医務室の管理もお願いしたいと思います」
「はい」
善法寺君の包帯を巻き直しながら、新野先生は続けた。
とても手際が良くて思わず見とれてしまう。
「それから隣室には、危険な薬草や毒薬を置いてあります。鍵は私が管理しているのですが、ちどりさんにも管理をお願いしたいと思います」
「はい」
シキミの件といい、潮江君が言った通り、やっぱり毒も扱うようだ。
「上級生が使用許可証を持ってきた時は、部屋を開けて許可証に書いてある使用分だけを渡してください」
「分かりました」
「これで大体の説明を終わります。ちどりさん、これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそお願い致します!」
私が改めて頭を下げると、背後の戸が開く音がした。
「失礼します」
「おや、三反田君」
部屋の扉を開けて入ってきたのは数馬だった。
「どうしたの数馬?」
「ちどり姉さん、お昼まだでしょ?一緒に食堂へ行こうと思って」
えへへと笑う数馬。なんて可愛いのだろうか。
思わずよしよしと撫でくりまわす。
「ああ、もうそんな時間ですか。ちどりさん。今日はここまでにして三反田君と行ってきてください」
「ありがとうございます。善法寺君は?」
「僕は新野先生と委員会の話があるから、もう少ししたら行きます。ちどりさん、お先にどうぞ」
それならお言葉に甘えて行かせて貰おうかな。
「善法寺先輩、新野先生、お先に失礼します。行こう。ちどり姉さん」
数馬がぎゅっと手を握ってくるもんだから思わずにやけてしまう。
「じゃあ、失礼します」
数馬と一緒に保健室を後にした。
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