いしゃたま!
□保健室に着きましたが……
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えーと。
保健室ってここだよね。うん。
ちゃんと、看板も下がっているし。
……じゃあ、なんで中から言い争う声が聞こえてくるんでしょうか?
「留三郎! 大体お前がきちんと学園を修補しておらんからこのようなことになるんだ!!」
「あんっな馬鹿力に対応できる壁なんか作れるか!修補は壊した小平太にやらせろ」
「おう!分かったぞ留三郎!!」
「職務怠慢だぞ!修補は用具委員会の仕事だろうが!!」
「だったら予算増やせってんだ。この馬鹿とどっかの石頭のせいで修補用の漆喰が追い付かねえんだよ!この馬鹿もんじ!!」
「んだと阿呆留が!?」
「やるか!」
「やらいでか!!」
「やれやれー!」
「ここで暴れないでくれ〜!」
善法寺君の悲痛な叫び声。
助けるべきだろうか。
いやいや怖い怖い、無理無理無理無理無む……
「よし!表へ出ろ!!今日こそ決着を着けてやる!!」
「ひいぃっ!?」
いきなりすぱんと扉があき、目の前に男の人の顔がってか隈がすごいぞこの人。
「うおっ!?」
男の人もぎょっとした顔でのけぞった。
「あれ?ちどりさん」
「どうかしたのか?」
善法寺君、食満君が後ろから覗いてきた。
知っている顔を見て安心する。
「新野先生にご挨拶と、仕事のご相談をしようと思って……」
「ああ、今、席を外していらっしゃるから。そのうち戻って来られますよ。どうぞお入りください、お茶を入れますね」
善法寺君がにこやかに準備を始める。さっきまで物凄く殺伐とした雰囲気だったけど良いのだろうか……。
「いさっくん。その子誰だ?」
目がくりっとした男の子がじっと見つめてきた。
「初めまして。三反田ちどりといいます。今日からこちらで新野先生の助手として働かさせていただきます。よろしくお願いいたします」
今日は挨拶してばっかりだ。
私が頭を軽く下げれば、男の子はにかりと笑う。
「へー。私は七松小平太だ。こっちは中在家長次」
七松君の後ろに立っている人が会釈をしてくれた。むっつりした顔は傷だらけだ。
「……よろしく、お願いします」
気をつけなくては聞こえないくらい小さな声だけど、挨拶してくれた。
良かった。さっきの言い争いは驚いたけど皆いい人そう。
「で、そっちの隈がすごいやつが潮江文次郎」
七松君が引き戸の前にいる男の人をしめした。
潮江君はじろじろと私を見ている。
というか睨んでいる。
私は、何かしただろうか。
ちょっと嫌な感じだなぁ、と思っていたら潮江君がぽつりと呟いた。
「……女に務まるのか」
「…………え、」
止せば良いのに、聞き返してしまった。
頭の奥の方がひやりとした感じに、私は潮江君に向き直っている。
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