いしゃたま!
□井桁模様のこどもたち
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目の前に走り出てきた子達は全部で五人。揃いの井桁模様の制服を着ている。
十歳くらいだろうか。とにかくころころと可愛い。
「ちどりさん、この子らが私の、」
「「土井先「誰「なめ「宿だ「しん「ちは!!」」
……おぉう。
土井先生の言葉を遮って六人で一斉に喋りだした。
え?なんだって?
ゴゴゴン!!
瞬時、土井先生の拳骨が六人に飛ぶ。い、痛そう。
「……一人ずつ喋りなさい。ちどりさん。この子らが私の担当する一年は組の生徒です」
「「「「こんにちは〜!!」」」」
綺麗に声がそろった。
そして一人ずつ話はじめる。
「土井先生。明日からの授業、よろしくお願いします」
ときりっとした眉毛が賢そうな子
その横の猫みたいな大きなつり目の子が。
「誰っすか?そのお姉さん」
「あ、えっと、私は、」
「私と庄左ヱ門でプリントを先生の部屋に纏めて置いておきました」
名乗ろうとした私は別の子の言葉に遮られる。
眼鏡の子と賢そうな子に土井先生がお礼を言った。
「しんべヱが制服キツイみたいです、代わりのありますか?」
円らな目をした活発そうな子がちょいちょいと指差した子は確かに小柄なのに丸々として制服が少し伸びている。
「えへへ〜すみません土井先生。後、初めましてのお姉さんこんにちは〜」
丸々とした子はあんまり気にしてないふうに、にこにこしていた。
そうして、全員が話終えて満足したのか、じっと私を見上げてくる。
どうやら、ここが、私が話始める場面らしい。
「初めまして。三反田ちどりといいます」
可愛いやら可笑しいやらで、苦笑混じりに挨拶すれば、子どもたちはぱっと顔を輝かせた。
「三反田数馬先輩とおんなじ名字ですね!」
と眼鏡の男の子。
「ええ、その三反田数馬の姉です。今日から保健の新野先生の助手として働かせてもらいます」
「三反田数馬先輩のお姉さん!?」
「保健室の先生なんだぁ〜!」
眼鏡の子がきらきらとした顔でこちらを見上げる。
「僕。保健委員会になったんです!だから良く保健室のお手伝いをするので、その時はよろしくお願いします!」
「そうなんだ。よろしくお願いしますね。皆も、」
「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」
声を揃えて言う皆。
可愛さに頬が緩む。土井先生もなんだか嬉しそうにしていた。
やっぱり、こどもたちのことが大切なんだなあと微笑ましく思うと目があった。
土井先生がにこりと笑ったので笑い返す。
するとつり目の子がついっと近づいて、私と土井先生の顔を交互にじっと見上げている。
「……なーんだ」
にやっと笑うつり目の子。
「ん?」
「俺はてっきり土井先生のお嫁さんなんかなあ、って思っちゃいました」
「はい!?」
「きり丸っっ!!」
再び飛ぶ土井先生の拳骨。物凄く良い音がした。
「いっってぇえ……!」
「きりちゃんたら余計な一言が多いんだから」
眼鏡の子も苦笑いしている。
「ちどりさんに失礼だろうが!!」
土井先生は顔を真っ赤にして怒っている。
学園長先生の庵での件といいからかわれやすい人なのかもしれない。
「土井先生ぇええっ!」
向こうから、もう一人、井桁模様の子供が走って来た。
「どうしたの虎若。」
「平太夫と三治郎のしかけたからくりで教室が半壊しそうなんです!」
「なにいぃっ!?」
教室が半壊ってどういう状況よ。
「ちどりさん。すみません!私は教室を見てきます。保健室はここをまっすぐ行って三番目です!!」
「ああ、ありがとうございます!早く行ってあげてください!」
「申し訳ない、では!」
「「「ちどりさんまたね〜」
」」」
こどもたちを連れて、土井先生は慌ただしく走りさっていった。
教室は大丈夫なんだろうか。
すこし心配に思いながらも私は私で保健室へ向かうべく歩みを進めるのだった。
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