いしゃたま!

□井桁模様のこどもたち
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「こ……ここはどこだ……?」

 嗚呼。なんだか左門君がのりうつった様な……。

 保健室へご挨拶。
 そして三年長屋にも行こうと意気揚々歩きだしました私ですが現在迷子です。


 なんでこの学園はどこもかしこも似たような感じなんだろうか。

「この廊下ってさっき通ったよね。うん……」

 左門君のことはもう笑えないな。

 はあ。とため息をついてはしたなくもしゃがみこむ。
 流石に少し疲れた。

 このまま永遠にどこにもたどり着けない気がしてきた。




「あの。大丈夫ですか?」

「うひゃいっ!?」


 いきなり後ろから声をかけられて驚いて飛び上がってしまった。
 向こうも驚いた顔をしている。

「あ、すみません。お加減でも悪いのかと」

「へ……ど、土井先生、ですよね?」

 先刻、学園長先生の庵で紹介していただいた先生方の一人だ。
 学園長先生に戯れに私との縁組みを持ち掛けられてからかわれていたから良く覚えている。

「はい、先程はどうも」

 土井先生もそのことを思い出したのか困ったように笑っている。
 道に迷った旨を伝えたら案内を申し出てくれた。

「ありがとうございます。でもお忙しくはないですか?」

「お気になさらず。ちょうど一段落着いたところですから」

 ふわりと笑う土井先生。
 善法寺君や食満君、シナ先生といい、先程からなんて優しい人ばかりだろうか。感激のあまり言葉が吐いて出る。

「私、失礼なんですが、忍術学園の方々ってもっと険しい感じかと思ってました」

「はい?」

「ですけど、道中であった生徒さんや、学園長先生、山本シナ先生、それに土井先生。会う人皆さんとても優しくて……数馬がこんなに良い方達に囲まれて勉強しているんだと知ってとても嬉しいです」

 ありがとうございます。と土井先生に笑ったら土井先生は嬉しそうな顔をしてから少し考えるようにして喋りだした。


「……忍びの生き方というのはちどりさんが思っていたようにやはり険しいものではあります。」

「土井先生……?」

「でも、この学園にいる間は世界の厳しさや暗さを見ないで欲しいと、私は思っているんです……。甘い考えかもしれないですが、生きていることに、忍びの生き方に悲観してほしくないと」

「……そうですか。」

「……あ、すみません。会ったばかりのちどりさんにこんな話。お恥ずかしい」

「そんなこと、ないですよ」

 私や数馬には三反田家があり、数馬には忍びではない生き方も用意されている。
 でもそうじゃない人達だって、此処にはたくさんいるんだろう。少し、しんみりとする話だった。

「土井先生は、皆に強く生きる術を教えてらっしゃるんですね」

 思ったままに、そう言葉を繋いでみた。
 土井先生は、はっとしたような顔で私を見る。

「……だと、良いんですが」

「そうですよ。」

 出会ったばかりの人間でも分かることはある。
 土井先生は一生懸命生徒のことを考えている良い先生だ。
 土井先生に教わるこどもたちは幸せ者だな。と、私は思った。

「そういえば、土井先生はどの学年を担当されているんですか?」

「ああ、私は、」


「「「「どいせんせぇ〜!!」」」」

 土井先生の言葉を遮るように私達の前に小さな子供たちが沢山走ってきた。

 ……どうしよう!可愛いぞ!

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