いしゃたま!
□やっと着いたよ忍術学園
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「では、善法寺先輩、食満先輩。失礼致します!!」
そう言って、神埼左門は走り去っていった。
「演習場の方角だね……」
「あいつ、何処へ行ったつもりだろうな」
「さあ……」
「……まずは、保健室か?」
「うん、すまない、留三郎。」
左門の行方が少々気にかかったが、善法寺伊作と食満留三郎もまた、歩き出した。
「あの人、数馬にあんまり似てないな」
「ちどりさん?」
「ああ、それと、女なのに医者になりたいってのも変わってる。新野先生の助手かあ……大丈夫なんか?」
「それは、大丈夫だよ」
「伊作?」
「これ」
善法寺はすっと自分の腕を示した。
「ちどりさんが処置してくれたんだ。腕は確かだよ」
「……なるほど。保健委員長のお前が言うならそうなんだろうな」
「あと……彼女は良い人だよ」
妙に断定的な言い方をする級友に目をやる食満だった。
またいつものお人好しかと少し呆れたような眼差しである。
しかしながら保健室をあける善法寺の表情は読めない。
「ちどりさんはね、このお馴染みの僕の不運について、謝ることはないと言ったんだ」
「社交辞令とかではないのか」
「最初は僕もそう思ったんだけどね、彼女が言うには、人の天運なんてのはその人が生まれもった姿形と同じように当人には儘ならないものなんだってさ」
善法寺は包帯が巻かれた腕をさすった。
彼女が自らの手拭いを引きちぎって作ったそれは、薄い紅梅色の布地である。
「当人が儘ならないことで責められるのは切ないからと、多分そんなことだと思う……彼女もうまく纏められていなかったから」
「うーん……分かるような分からんような?」
「……でも、僕は嬉しかったよ。口先だけの慰めじゃなくて、彼女は彼女なりの考えで僕に謝らないで欲しいと言ってくれたんだ」
一つ一つ、言葉を探すように語りかけてくれたちどりの真剣な顔。
「だから、僕は彼女が良い人だと思うんだ」
言葉を選びながらも真摯に自身に語りかけた彼女を思い出して、頬が緩む。
「……お前、まさか惚れた?」
「うん、そうかも」
「はっ!?」
「冗談だよ……良い人だとは思うけどさ」
楽しそうに笑う善法寺が棚に少し寄りかかる、その振動により薬箱が彼の頭上に落ちるのであった。
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