いしゃたま!
□やっと着いたよ忍術学園
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「つ、着いたぁ……!」
目の前には物凄く長い塀と馬鹿でかい門がある。山寺みたいに見えるここが忍術学園だそうだ。
「ちどりお姉さん、お疲れ様です!」
「ありがとう左門くん、でも、私より……」
後方を見ると、善法寺君に肩を貸して歩いてくる青年と目があった。
「あの、食満君。ありがとうございました」
「ああ、気にすんな。俺こそさっきは驚かせて悪かったな」
ニカッと笑うつり目の青年、食満留三郎君は、善法寺君の級友らしい。
山道で休憩していた私達三人の前に音もなく飛び降りてきた時は本当に驚いた。
「伊作と神埼らしき姿を見かけたが、見たことがないあんたがいたから様子を見させて貰ったんだ。もし三人が曲者であるなら蹴散らすつもりだったが、」
おお……なんだか物騒な発言。
「二人で取り決めておいた矢羽が役にたったね」
全身ボロボロだけどにこにこ笑っている善法寺君。やばねってなんだろう?
まあ、とりあえず、食満君が加わってくれたお陰で、学園までに比較的に楽にたどり着けた様に思う。
食満君は、驚いたことに道中にある落とし穴や罠(だから何故そんな危険なものがあるの。流石、忍者の学校、怖い)の位置や仕掛けを熟知していて、その殆どを回避しながら進むことができた。(いくつかは善法寺君が引っ掛かっていた)
凄いですねぇと感心していたら「用具委員長だからな」と良く分からない返しをされた。
「ああ。やっと着いたよ。ありがとう留三郎」
「構わんさ、同室だからな」
にこにこと笑い合う二人。
仲良しだなあ、と微笑ましく見てると、門からひょこっと誰かが顔を覗かせた。
「小松田さん、お久しぶりです!」
左門君に声をかけられた彼はふにゃっとした笑顔を浮かべた、同い年くらいに見えるけど、ちょっと幼い感じもするその人の胸には「事務」と書かれた名札。
「神埼左門君、それに善法寺伊作君と食満留三郎君、お帰りなさぁい。それと……」
こちらに顔を向けられたのでとりあえず会釈をする。
「お客様ですねぇ。入門表にサインをお願いしまぁす。」
表情も声もしゃべり方もふにゃふにゃした人だなぁと思いながら、差し出された筆で名前を書く。
「三反田ちどりさん…。あっ!今学期からここで働く人ですね!」
「ええ、はじめまして。数馬がいつもお世話になっております。よろしくお願いいたします」
ぱあっと明るい笑顔を向けられた。
うん、なんだろう。男の人に失礼かもしれないけど、この人可愛いな。
「僕、事務員の小松田秀作って言います。はじめましてぇ。嬉しいなあ。僕より一つお姉さんですよね?」
「え!?十六歳!?」
「は?じゅ、十七歳ぃ!?」
後ろからの食満君の声と被った。
案の定、驚愕の表情で私を見てる。
「学園長先生のところまで案内するね」
左門君、善法寺君、食満君とは一旦お別れか、少しの距離だったけど、随分長く一緒にいたみたいで、なんだか寂しく思った。
「ちどりお姉さん。お話が終わったら三年長屋に遊びに来てくださいね!」
ぎゅっと手を握ってくる左門君。
何この可愛すぎる生き物。
「うん! じゃあ、また後で、善法寺君、食満君もありがとうございました!」
二人にもう一度お礼を言って、左門君の頭をなでなでしてから、小松田さんといっしょに歩き始めた。
学園長先生か…うぅ、緊張してきた……。
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