いしゃたま!
□決断する子と不運少年
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どうも、今日は!三反田ちどりです!
……と、誰に向かって言ってんだか、元気はつらつな独り自己紹介にうすら寒くなる。
まあ、気を取り直しまして……昨日、父様の口車に載せられてうっかり住み慣れた実家を離れて忍術学園に向かい、かなり険しい山道を、徒歩で、独りで、向かっています。
本当、向こうに可愛い可愛い数馬と貴重な薬草等々がいるんでなければ、くじけそうな私がいるんですが……。
特に、母様が纏めて下さった身の回り品とは別のこの箱。
桐でできた見た目には綺麗な箱は父様が持たせて下さったもので、これがとにかく重い。重すぎる。
「……ちょっと休憩」
道端の平たい石に座って荷物を下ろした。
学園長先生から貰った手紙に同封された地図(流出厳禁ってでかでかと書かれてある。流石は忍者の学園、場所は秘密ってことだろう。)に寄ればもうこの辺りなんだと思うけど。
「どこも同じ様に見えるなあ……」
何分地図も大雑把で分かりにくい。
「そうだ、この箱」
父様が持たせてくれた、この重い桐の箱。向こうに着いたら空けろと言われていたけれど、いったいなんなのやら。
持ち上げるとやはり、かなりの重さだ。
「……気になる」
別に学園はもう近場なんだろうし良いよね。
桐の箱の蓋を空けてみることにした。
「さてさて、何が出るかなっ。何が出るかなぁ〜」
……先ほどから独り言はげしく、一人、女が山道で空しいとか思わなくないが、まだ昼なのにちょっと周り薄暗くて恐いのを全力で誤魔化しているのだから仕方ないだろう。
「開封!!……って、あ。」
箱の中には真新しい薬研が入っていた。そして、一辺の紙。
それには父様の字で
[お前の事だ、どうせ道中で空けているかもしれんし、もし言い付けを守って学園で空けていたならそれはそれで良い。とにかく大事に使いなさい。]
と、書かれてあった。
「父様、」
薬研には梅の花の彫り物がされてある。梅は私の好きな花だ。
「……医者修行…………ね、」
婿探しだとかふざけた理由も着いていたけれど父様は私の医者として修練もきちんと考えてくれていた様だ。
女が嫁にも行かずに医者や薬師になりたいなんて、この時世に世迷い事の様なことだけれども、それでも父様は私の意志を理解してくれているのだ。
「父様。私、頑張ります」
独り言だったけれど不思議と虚しくは響かなかった。
薬研をそっと箱にしまい、蓋を閉めて風呂敷にまた包んだ。
「よーっし!では出発、」
そうしてまた再び学園に向かって歩きだそうとした。
その時である。
『忍術学園はこっちだあぁぁああああああああ!!』
『っぎゃあああああああ!?』
唐突右の茂みの中から男の子が飛び出してきました。
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