理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□あの日あの時あの場所で……?
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前回までのあらすじ。
忍たま(?)世界に幼女として転生して四年目、恐らく現在九歳の藤山葵ちゃん、竜爺師匠から命ぜられた無茶ぶり山賊退治で謎の少女(少年?)とエンカウントしましたー……って、改めて考え直すとマジなんだこの状況。
「な、何者だあんた……?」
目の前の可愛い女の子がいきなりクソ生意気そうな少年になった。
というか、私はその笑い方に妙に見覚えがある。
「……ふっ、」
鼻で笑いやがった。
「人に何者かを尋ねる時は、まず自らが名乗る事も知らんのか山猿め」
スゲー、常識を問われてるのにめっちゃムカつくなこいつ。
「え、あー……た、太郎、丸」
「丸」はfeat師匠だ。
変装中は偽名を名乗るべし。竜爺師匠とのお約束である、というか破ったら師匠に木から吊るされる。
「ふーん」
「おい、聞いといて興味無しとか」
思わずつっこめば、またせせら笑いが返って来た。
「私は常識を教えてやっただけで、山猿の名前など聞いてないからな」
……なあ、こいつ殴って良い?
此処まで喧嘩売られたら買わないのとか逆に失礼だよね、うん殴りてえマジ。
ていうか、本当にまさかだと思うけど、お前は、
「まあ、良い。名乗ったならば此方も特別に名乗ってやろう。私は鉢屋三郎」
「……その、まさかかよ」
「は?」
「……此方の話だ気にすんな」
その場に膝を着いてorzになってしまった。
「ん……?つまり、それって、」
「おい、どうした山猿」
「るせえ。今、大事な考え事してんだ黙ってろや三郎」
「いきなり呼び捨てんな山猿」
なんか言ってるが、まあ、無視。
orz状態で地面を睨み付けて、私は無い頭を振り絞る。
立花先輩が一年生、つまり、十歳、そして三郎、三郎本人だろう、こいつは、
「何見てんだ」
「あんた、齢は九つ?」
「は?そうだが、それがどうした。」
私は何と無く確信を得る。
あまりにも荒唐無稽だが、そう考えれば、全て辻褄が合う。
私は、過去の世界にいる。
「おい、何時まで這いつくばってる」
目の前でめっちゃ不快そうに顔を歪める少年の顔は、不破君のそれではない。
私は徐に立ち上がり、ばっとその鼻面に手を伸ばした。
「おっ、まえ!何する気だ!!」
しかし、寸前で避けられ、頭を叩かれた。
「いや、それも変装なのかと、」
「悪いが地顔だ。その汚そうな手で触ろうとするな」
「……マジかよ!?」
鉢屋三郎の素顔とか、それトップシークレットなんじゃねえの!?
わ、私はこの後、闇の組織に寄って消されるパターンでない!?
「阿呆面こいてねえで、答えろ山猿。私に協力するか、しないのか」
びっ、と、鼻先に杖を突き付けられる。
「………………」
その顔は不破君の形をしてなくても生意気そうに光る目はやっぱり三郎で。
思わず叫びそうになった。
私だ、と、抱きついてしまいたくなった。
でも、ぐっ、と堪える。
此処があの世界の過去なのだとしたら、この頃の三郎は私どころか不破君にすら会ってもいない。
このまま、数年後、彼が十四歳になった時に初めて私に会うのだとしたら、今、私が藤山葵として会うことは、駄目なのだ、と、反射的にその考えが脳裏を巡った。
「山猿じゃなくて、太郎丸だ。何に協力しろって?」
我ながら適応力と切り替え半端無いわと思いながら、私は口を開いたのだった。
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