理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□突如始まる修行(ハードモード)
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どーも。暫定、忍たまの世界に生まれ変わったっぽい藤山葵です。
突然ですが、伝説的な忍者(自称?)の竜王丸の爺さんに拾われて弟子になってから、なんと早くも四年が経過しています。
時間が立つのが早過ぎるとか3分クッキングとか言わないで欲しい。
四年の間に何をしていたかといえば、竜爺と修行して婆ちゃんと川で洗濯して三人で畑耕して竜爺と修行して婆ちゃんと川で洗濯して三人で畑耕しての繰り返しでした。
忍術学園には……行っていない。行こうとはしなかった。
何故かといえば、
なんか、私、ずれた所にいる気がするからなんだわ。
竜爺は学園長先生と古い友人らしく時々学園に行ってるらしい、で、その度に学園の様子とかそれとなく聞いてたんだけど、私の知ってる人達が全然出てこない。
あ、でもちょっと前に、山田先生が登場し出した。
とにかく、此処は私が知ってる忍たまの世界じゃない感じがするのだった。
そんなこんなで、学園に向かうのも怖くてずるずるとただ月日を過ごしていた訳である。
竜爺は私の事を学園長の爺ちゃんに自慢したいらしいけど。
そう、竜爺との修行も結構楽しい。 たまにこれ下手すりゃ児童虐待寸前じゃね?って時もあるけど。
衣食住揃って屋根つきの温かい所で眠れて、加えて竜爺も婆ちゃんも優しい。きっと、私は贅沢すぎるのかもしれない。
でも、私はやっぱりあの学園に、三郎達に会いたいと、何処かで思っていた。
だから、こんな夕焼けが赤過ぎる日なんかはついつい感傷的になってしまう。
私達三人が住む吉田村の境の、一番高い杉の木の枝に腰掛けて、私は竜爺の帰りを待つ。
今日、竜爺は学園に行っていた筈だ。
話を聞いてみるべきか、否か。
自分の知らない学園の事を聞く度に襲われる落胆や焦燥感は、私を迷わせるのに充分だった。
なんで、こんなことになってんだろう。
ごちり、と額を木の幹にぶつける。
今の生活は幸せだ。
寧ろ、不幸せだなんて思えばバチが当たるだろう。なのに、何時も、何処か虚しくて寂しい。
誰でも良いから会いたいな。
そう思っていたら、木の下へと此方へ近づいてくる竜爺が見えた。
私は、気を取り直すように目元をぬぐって、ぱんと頬を叩いた。
とん、と、軽く枝を蹴り、竜爺の前に降り立つ。
「おお。ただいま、葵」
「ちっ、今日も驚かなかったか」
「ふは。この竜王丸を驚かそうなど十年早いわ!」
からからと笑う竜爺を見上げて私もにやりと笑う。
「十年後なんて竜爺、よぼよぼになっちゃってるよ」
「こりゃ!失礼な!!」
小突こうとする腕から逃げながら私は竜爺の背中にぺたりと張り付く。
「おやおや、今日は甘えたじゃの葵」
「竜爺」
竜爺の背中に顔を埋めながらくぐもった声でそう言えば、優しい声が返ってきた。
「なんじゃ?」
「……忍術学園はどうだった?」
落胆することも、寂しさが増すことも分かっているのに、やっぱり聞かずにいられない。
ちっぽけな希望にいつまでも私はしがみついている。
「よいしょっと、……そうじゃのう、渦正は相変わらず学生に無茶ばかり言っておったわい」
私を背中におんぶして竜爺は歩き出す。見た目は何時も貧相な感じに変装しているのにやたらと力持ちな人だ。
「新しい先生も入られたのう。松千代殿といって、随分と恥ずかしがり屋の方じゃから碌に挨拶ができんかった」
「松千代先生?」
話した事は無いが、目立つ見た目とその異常な恥ずかしがりぶりは良く覚えている。
知ってる人の名前が出たことで、少し私は前のめりになる。
「竜爺、他には?」
「他……?そうじゃなあ、今年の一年生は優秀な者が多いようじゃの」
「……どんな子達?」
一年生。
私の脳裏に井桁模様の人懐っこい笑顔達が浮かぶ。
胸がドキドキした。
知らない名前が出てきたらどうしよう。
「ふむ。確か、立花仙蔵君といったか。一年い組の生徒じゃが、彼が一番目立っておったなあ。彼は一年生にしては中々に胆が座っておるわい」
「…………え」
「ん?どうした?」
「……な、なんでもない」
胸のドキドキがさっきより増した気がする。
立花先輩が、一年生?
いったい、どういうことなんだろう。
ぐるぐるとしだした私の思考は竜爺の言葉に遮られる。
「ところで葵。明日の修行じゃが」
「ん、はい。師匠」
殆ど条件反射だ。
修行モードの竜爺に対し返事が遅れたら後が非常に怖い。
家が見えてきた。竜爺の背中からすとんと下ろされる。
「山賊退治じゃ」
「はい。……って、え?」
今、山賊退治って言いました?
え?中身はどうあれ葵ちゃんは九才児なんですけど?え?
「詳しくは飯の後に話そう」
「……はい」
しかし、基本的に拒否権と言うものが無い私は、項垂れながらも返事をして、竜爺の影を踏みつけながら、その背中に続いてのろのろ歩くのだった。
師匠、貴方もそうとう無茶を言う人だわ。
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