理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□東門及び正門にて、そして、彼女は
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※暴力・流血表現あり




 忍術学園、東門にて、

 そこでは、六年ろ組、中在家長次により見張り役のカエンタケ忍者が極静かに倒されて以降、動きらしい動きはなかった。


「トモミちゃん、」

 くのいち教室の少女はその真っ直ぐな髪を揺らして、そのかそけき声を出す松葉の影を見上げる。

「くのいち教室の、半数を、救護に回す。更に、下がらせてくれ」

「はい」

 くのいち教室が動き出すのを目の端に映しながら、中在家は、自分よりも遥かに小さな浅葱の影達を見下ろした。

「後、四半刻、合図が出なければ、動く」

 堅い表情で、一年い組、ろ組の生徒達は頷いた。
 常、面倒事の中心にいる一年は組達と違い、彼等は実戦経験が浅い。

 そんな一年生達と、くのいち教室の生徒達、そして六年は中在家を一人として構成された、最も非力とさえ言えるかもしれないこの一団の、すべき事はただ一つ。
 仲間達の退路の確保である。

 此処から拠点である廃寺は最も近い。

「…………」

「中在家先輩、どうされましたか」

 一年ろ組の二ノ坪怪士丸は、委員会の先輩の表情に不審なものを覚え、そっと、尋ねた。

「……先生方は、何故、動き出さないのだろうか」

「え」

「此処まで、生徒が、大立回りを始めているというのに、誰一人、制止が来ない」

「それは、えっと、何でだろう……?」

 中在家の疑問に首を傾げる二ノ坪であったが、やおら、門の向こうから上がった微かな爆発音にその意識は引っ張られた。

「合図だ!」

「行くぞ皆!!」

「「「「応!!」」」」

 一年い組、ろ組達が力を揃えて抱えている一本の丸太、競合地域の罠の為に備えられてあった其を抱えたまま、閉ざされた東門に向かい、力の限り走り出す。

「いっけえええええっ!!!」




 破壊音と共に、萌黄と紺碧、二藍、浅葱、松葉が混ざり合い、東門を落とさんと怒号を上げながら激しくうねった。

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