理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□裏門にて、そして、邂逅
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※暴力・流血表現あり





「では、食満先輩、宜しいですね」

 忍術学園の裏門にて、四年ろ組の田村三木ヱ門は、そう、未だ苦い表情の男、六年は組、食満留三郎を見る。

「まあ、構わん。修繕は手伝えよ」

「無論です」

 そう、夜目にも鮮やかな笑みを浮かべた田村は、足元の銅製石火矢の照準を再度手早く確認する。

「放てっ!!!」

 六年い組、立花仙蔵の鋭い声と共に、田村の相棒たる石火矢から放たれた砲弾が裏門を粉砕。
 続けてもう一発、門を越え、遠方に着弾させるように放つ。

「良い腕だ」

「当然です」

 立花の賛辞に事も無げに笑う田村である。

「来たぞっ!!」

 裏門から飛び出してきたカエンタケ忍者数名に向かって行くのは、食満留三郎、六年い組の潮江文次郎、四年ろ組の浜守一朗、三年ろ組の富松作兵衛の四名。

「俺達が相手だカエンタケ忍者!」

「忍術学園の力を見せてやる!!」

「足を引っ張るなよ留三郎!」

「そっくりそのまま熨斗着けて返してやるわあ文次郎ううう!!」

 憎まれ口を飛ばしながらも、二つの松葉の影は重なり、離れながら、ならず者を打ち崩して行く。


「明日は雨だな」

 立花の呟きに田村は小さく笑った。


 さて、彼等が交戦する間に、塀を飛び越えていく影。


「塀からの着地地点に落とし穴があるから注意してね、特に善法寺先輩」


 綾部喜八郎率いる一団であった。



 肩違えの術である。

 敵の行動に乗じ、空かさず逆に侵入する。

 往来が肩を違えてすれ違う様を取り、そう呼ばれている。



 六年は組、善法寺伊作は、綾部の指示に苦笑を浮かべながら予想される位置よりもさらに遠くへと着地する。

 と、そのまま地下深く吸い込まれていく善法寺であった。

「おやまあ」

「伊作先輩いいい!!」

「だっ、大丈夫!先に行ってくれ!!」

「だってさ。三年、二年とタカ丸さんは、藤内の指示に従ってね」

 進入に気付いたカエンタケが投げた棒手裏剣を綾部の踏鋤が弾き、三年は組の三反田数馬は事なきを得る。

「カエンタケ忍者を蹴散らしながら東門へ向かうぞ!罠に誘導するんだ!!」

 三年は組、浦風藤内の声と共に、萌黄と、紺碧、二藍の影は一斉に走り出した。

「さあて、流石に数は多いねえ」

 踏鋤を構え直す綾部が背中を任せるのは同級の平滝夜叉丸である。

「当然だろう。なにせ、此処は学園長先生の庵から最も近い」

 平はそう短く答えて、戦輪を飛ばす。

「つまりは此処が落ちれば、片が付くという事だ」

 平の言葉に呼応するかの様に、門前を突破した、潮江、食満率いる四名と、田村、立花がカエンタケ忍者達に向かっていくのが二人の目の端に映った。

「滝まで引っ掛からないでよ」

 喜八郎は目を細め、周囲の落とし穴の位置、罠の発動方法を反芻する。
 背後で、ふ、と笑う気配。

「私を誰だと思っている」

 襲い掛かる忍の攻撃を避け、強かに手刀を落としながら平は大輪の花を思わせる笑みを浮かべる。

「この平滝夜叉丸、四年間共に過ごした友であるお前の罠の癖などとうに習知だ」

「おやまあ」

 平に攻撃をいなされた忍が、吸い込まれるように落とし穴へと消えていくのを見ながら、綾部も口許に笑みを浮かべた。


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