理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□希望の朝はまだ遠いかも
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「葵さんっ!!」
「お帰りなさい!」
「御無事で良かったです!」
尾浜君に連れられて私達が廃寺に辿り着いたら、体育委員会の後輩達が御堂から飛び出して私に駆け寄ってきた。
「金吾!四郎兵衛!!って三之助!それは久々知君だから!!」
どれだけ目測を誤ってんだ無自覚方向音痴。
久々知君がべりっと三之助を引き剥がし、私の前にひょいっと置けば、漸く他の二人みたいに私に抱き着いた。
「……どうしたよ、皆……金吾?」
三人はぎゅうぎゅう引っ付いて離れない。特に金吾なんかはぐずぐず泣きながらである。
なあ、お前ら、一応私の隣に滝夜叉丸先輩もおるで。こいつにもぎゅっとしてあげてくれよ寂しそうじゃん。
「葵、長次」
「七松先輩」
続いて奥からやって来た七松先輩は、私の顔を見て明らかにほっとした顔をする。
「尾浜、言わなかったんだな」
「………当然です。俺だって藤山の前衛ですから」
尾浜君と七松先輩はいったい何の話をしてるんだろう。
怪訝な顔をしている私達に七松先輩はにかっといつもの笑顔を作って向き直る。
「山田先生達がお待ちだ。上級生は本堂の方へ行こう」
本堂には、仏像をバックに山田先生を中心として、ぐるっと先生方、六年生二人、四年生三人が円になって座っている。
何だか異様な雰囲気に少し足がすくんでいたら、座りなさいと促されて私達はばらばらと座りだす。
なんなの君達。魔物でも召喚する気なの?
「……後から来た者達は、学園長先生が囚われているのはもう聞いているな」
山田先生が静かにそう話始め、私達はそれに頷いた。
「多勢の野武士の襲撃を受けたと、尾浜から聞きました」
三郎がそう山田先生に言えば、眉間の皺を深くされる。
先生方が皆、先程から私を見ているのが落ち着かない気分にさせた。
「野武士共は只の先鋒だったんだ。今は……何処かの忍者達が学園を占拠しているよ」
「何処の忍かは、今、文次郎と仙蔵が調べに出ている」
善法寺先輩と食満先輩が暗い表情でそう言った。
「爺ちゃんは、学園長先生は御無事なんですか?」
「……恐らく、現在は、」
私の問いに、山田先生は曖昧に答えて、口をつぐむ。
何かを言い澱んでいる雰囲気に、私は隣に座る喜八郎と顔を見合わせた。その時、おほん、と咳払いが一つ響く。
「山田先生、伝えるのが心苦しいのなら、私が言いましょう」
「安藤先生。いえ、それは、」
「なに、憎まれ役は慣れておりますよ」
安藤先生が山田先生を制して私に向き直る。
「葵さん。……敵は、貴女を引き渡すよう要求してきています」
安藤先生の声が、張り詰めた様な本堂に響いた。
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