理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□ゴールスタート繋がれば
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 落ちていく。

 まるで人形みたいに見えて、その事が、酷く気持ち悪かった。


 窓に貼り付く、顔達。恐怖、驚愕、興奮。
 叫び声が鼓膜を揺らす。
 空気がうねり、私は膝の震えのままにその場に崩れ落ちる。







 アイツッテサ

 ウワマジデ

 ヤベエシャメットキャヨカッタ











 何の話をしている、何の話を、何の話を、何の話を、何の話を、






 此処にいたくない!!!



 それは、誰の叫びだったのか。














「……ぅえっ」

 吐き気に襲われて身体を折り曲げた。
 視界がちかちかする。

 胃液か唾か分からないものが口の端から垂れた。
 何処もかしこも、薄い灰色。

「私は、あの狼、なんて、知らない」

 喘ぐ息を押さえながら喋ったら、またえづいた。

「……同一存在に寄る記憶の混線。我々にとっても想定外です」

 無機質な声が答えた。

 答えたっつっても、理解できない説明は答えになってないんだけど。

「後、四日です」

「黙れ」

 視界が揺らいでいく。
 私はぎゅっと目を閉じた。











「……いっ、おいっ!!」

「……っ」

 肩が揺れる感覚に、閉じた目を開けば、直ぐ目の前で細面の顔が私を覗き込んでいる。

「よ、三郎」

 掠れた声で、そう言えば、三郎はぐっと眉間に皺を寄せ、大袈裟な溜め息を吐いた。

「本当、あり得ねえから、お前」

「んー、うん……」

 起き上がれば、わあお。皆さんお揃いで、

「葵っ!」

「おぶっ!!」

「こら、喜八郎っ!」

 喜八郎がぶつかるみたいにして抱き着いてきた。
 ちょっ、苦しいって。滝夜叉丸がひっぺがそうと奮起してるけど、うん、もう良いよなんか更に閉まるだけだから。

 ていうか、なんか周り明るいんだけど、

「朝……?」

「……ああ……三日目の、朝、だ」

「マジっすか」

「葵、ずっと眠ってたよ」

 不破君と、中在家先輩は心配そうに私を見下ろした。

「最初は学園に戻ろうかって言ってたんだが、三郎がそれは危険だと判断したんだ」

 久々知君がそう言って三朗に目をやる。
 三郎はふいっと余所を向いた。

「酷く魘されておられたので、心配致しました」

 喜八郎をひっぺがすのを諦めた滝夜叉丸が眉を下げながらそう言った。



 そうして、そんな私の周りを取り囲む彼等の向こう側に、

 ぼさぼさ頭が土下座状態で座っているのが見えた。




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