理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□愛を語れよ
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 現状把握の為に集まった六年生六人組が大体の話を終わらせると、もん兄ぃが木札と書簡を私に差し出した。

「受けとれ。勝負としては、俺達の負けだからな」

「私と文次郎は一度学園に戻り、学園長先生に報告をしに行こうと思う」

「そうですか……戻るなら気を付けて下さい。逢坂さんの術の有効範囲に入ることになるので」

「なら、私と留三郎も戻るぞ!」

「うぐっ!?」

 七松先輩がそう言って、食満先輩の首もとから木札をもぎ取った。一瞬閉まったなあれ。

「おかしくなったら私が殴ってやろう」

「ち、力加減はして下さいよマジで」

 ぽいっと私に向かって放られた書簡と木札を受けとる。

「いさっくんと斎藤はどうするんだ?」

「僕達は木札も書簡も昨日仙蔵に取られちゃったから、どちらにしても脱落だよ」

「喜八郎の罠、怖かったあ」

 二人の顔がひきつっている。じゃあ、この木札は二人のも混ざってるわけか。情け容赦ないな仙様。

「うむ。腕をあげたな喜八郎」

「当然でーす」

 立花先輩は嬉しそうに喜八郎を誉める。
 喜八郎は喜八郎でけろっとした顔でピースしている。お前等ほんとSっ気強いよな。

「長次と不破は、藤山達に着いてやって来れるか」

 もん兄ぃの言葉に二人は頷く。

「……ああ」

「承知しました」

「別に大丈夫ですよ?」

 喜八郎トラップがマジなく頃でひぐらしなお陰で、今までほぼ無傷で来れている。
 喜八郎は明らかに顔をしかめて不満気だ。不破君は苦笑を浮かべてその表情を見た。

「天才トラパーを信頼してない訳じゃないけれど、葵に何かあったら元も子もないからね」

「……分かりました」

 ということで、一同一時解散。
 私達は四人で行動することになった。

「で、これからどうするの?」

 喜八郎が首を傾げる。

「とりあえず、ゴールには向かおうか。で、出会ってしまったら穏便にドンパチ」

「おー」

 まあ、昨日までとやることは変わりない。

「あと、三郎アンド滝夜叉丸とも一度合流したいな……それで良いですか?」

「うん。そうだね」

「構わん、行こうか」

「んじゃ、出発しましょー」

 中在家先輩を先頭に次に私、喜八郎、不破君と並んで進む。

 なんかRPGのパーティーの様だ。
 中在家先輩が賢者で、喜八郎が魔法使いで、不破君はなんだろう、僧侶かな、なんか偏りあるな。勇者どこだ、私か。いや、勇者ってキャラじゃないな。
 なんだろう……スライム?



「チャッチャチャーチャーチャーチャーチャッチャラー、チャチャチャチャーラ、チャチャラチャッチャー、」

「藤山」

「あ、すみません」

 竜のクエストなあれを無意識に歌っていたらスライムは賢者に怒られました。

「下がりなさい」

「んえ?」

 賢者もとい中在家先輩が手で後方の私達が進むのを制した。

 ザザッという音と共に私達の目の前に降り立つ影。
 モンスターが一体現れた!ではなく、

「兵助!!」

 不破君の緊迫した声。
 へいすけ、制服は五年生……えーと、確か、足立だか菊地だかそんな苗字の奴だ。
 ゆうちゃんノートの内容を脳内で反芻する。

 五年い組の生徒で、彼の事が記述されているページには同じ単語が何度も出てきたのを覚えてる。

 彼は、暗い生気の無い目で棒状の武器を構える。
 中在家先輩、喜八郎は私を背後に回すようにして構えた。
 不破君は複雑な表情を浮かべて迷っている様に見えた。

「ちょっと、待ってください二人とも」

「藤山……?」

 二人を押し退けるように前に出る。
 中在家先輩が肩に手を掛けたが大丈夫だと振り返って笑って見せた。

「菊地君」

「久々知だ」

「間違えました」

 後ろで軽くずっこけるような音がした。菊地君じゃなかった久々知君は眉ひとつ動かさず私を見た。
 私は咳払いで気を取り直して言葉を続ける。

「勝負をしよう」

「ああ、望むところだ。構えろ!!」

 気迫たっぷりの久々知君にひらひらと手を振る。

「肉弾戦じゃないよ」

「……何だと?」

 怪訝そうに僅かに眉を潜める彼に対し、私はにやっと笑って口を開いた。






「チキチキ!第一回、豆腐料理幾つ言えるかな勝負だ!!!」

「……あ?」


 あ?ておま、反抗期の中坊かよ。

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