理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□平成21年初放映のあれ作戦
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「ねえ、喜八郎。どうするよ、これ」
「そうだねえ、先ずは顔を洗って差し上げないと」
五年ろ組の編入生、藤山葵と四年い組の綾部喜八郎が仲良く膝を並べて穴の中を覗きこんでいる。
「それにしても……」
「すっごい断末魔だった」
「「ねーっ!!」」
「…………勝手に殺すなよ」
楽しそうに顔を見合わせる二人を、六年い組の潮江文次郎は顔をひきつらせながら少し遠巻きに見ていた。
「おお!あった!!神よ!」
私と潮江氏が落ちた場所からそう遠くない場所に、ゆうちゃんノートは落ちてあった。
「なんだそりゃ」
恐らく崖から落ちた衝撃で正気に戻ったんだろう潮江氏は不思議そうな顔で、私の手の中のノートを見ている。
「親友から貰った秘密兵器です」
えーと、立花仙蔵、立花仙蔵……うん、あった、ここだ。
ふむ。弱点は湿り気コンビこと一年は組の喜三太君としんべヱ君とある。
あの二人、ぽかぽか日向ぼっこなイメージだからどう湿り気なんか分からんけど、喜三太君と言えば、
「……うし。やっぱり、試してみっか」
辺りの石をひっくり返して、湿った地面を探せば……
「うぇ、いたいた」
ナメクジは好きですかー?
ちょっと無理かなー!!
脳内で喜三太君と会話しながら、脱いだ頭巾の上にナメクジをぽいぽい置いていく、うひぃぃ……!!なんなの室町自然界!!でっかいのがうようよいるんだけど!!!?
「な、蛞蝓ぃ!?」
潮江氏がすっとんきょうな声を出しているのを他所に、その辺のミミズもついでに入れといた。
まじ半端ないチキン肌。もうこの頭巾使えない。
「だとしたら、俺に責任があるな」
「ん?どしました?」
振り返れば、潮江氏が何か思い詰めた顔をしてらっしゃる。
「いや。なんでもねえ」
口ごもる彼は、やっぱり、父ちゃんにそっくりだ。
状況を考えると不謹慎かもしれないけれど、胸に暖かいものが込み上げてくる。
「急ぎましょう、潮江父ちゃん」
だからだろう。思わず、父ちゃんと呼んでしまうのである。
「父ちゃん言うな」
むすっとした顔の潮江氏、
確かに十五歳に「父ちゃん」は失礼か。似てはいるけど、父ちゃんよりは若く見えるし……兄ちゃんがいたらこんな感じかな。
「じゃあ……もん兄ぃ」
うん、良いな。
私、独りっ子だから兄弟とか憧れてたんだよ。
もん兄ぃはなんとも言えない顔で私を見ている。
その時、また爆発音が聞こえた。
おっと、和んでる場合じゃない。急いで喜八郎を助太刀に行かなくては、
「迂回して間に合えば良いっすけど」
「待て」
走り出そうとした私を、もん兄ぃが止める。
懐からさっと縄状のものを取り出した。
「鈎縄ぐらい持っとれ。これぐらいなら登る方が早い」
「おお!」
流石学園一忍者してる男だな!!
ぱちぱちと拍手をする私に対し、もん兄ぃは大きな溜め息を吐いた。
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