理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□とりま行動開始
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 策はまったくないけれど、不破雷蔵君奪還作戦決行を宣言した藤山さんですが、本当に策がないので、仕方無く情報収集から始めることしました。

「失礼します」

「よ。滝夜叉丸、来たか」

 その日の夕方。
 私は体育委員会の四年生、滝夜叉丸を部屋に呼び出した。
 子供の頃に見たアニメでは自慢やで自惚れが強くて乱太郎君達が辟易してる感じだったけど、実際に委員会で見るとしっかりしてんだよな……まあ、七松パイセンの下にいたら否応なくそうなるか。

「どうされましたか?実技も座学も学年ナンバーワン、見た目も完璧、眉目秀麗かつ優秀な平滝夜叉丸にどのような御用件でしょう?」

 前言撤回。
 いちいちそれ言わなきゃ喋れないのか君は。
 ファッサアアアってしたよ髪の毛ファッサアアアて。

「うん、その優秀な滝夜叉丸にちょっと質問があるんだよね」

 でもまあ、根はたんじゅ……素直な子なので、少しよいしょすれば周りにぶわっと薔薇のエフェクトが見えるくらい喜ぶ。

「どうぞ!このスーパーパーフェクト忍たまである滝夜叉丸に何なりと御質問くださいませ!!」

「……逢坂さんの件なんだけどね」

 スーパーパーフェクト忍たまはその単語にふっと眉を潜める。
 少し、目に真剣みを帯びさせた。

「滝夜叉丸は四年生。上級生だった訳だけど、逢坂さんの影響を受けてなかったよな」

「はい。そうですが、」

「それは何故なんだろう?自覚できるものはあるかな?」

 滝夜叉丸は首を傾げている。

「……特には」

「そっか、他に四年生で影響を受けてない奴はいるか?」

「私の学友に三人おります」

「そいつらと話をしたい。明日の昼休みに連れてきてくれるか?」

「はい。」

 滝夜叉丸が部屋を後にしたあと、私は天井を見上げる。

「だから、普通に来てってば……」

 尾浜君が悪いと笑いながら天井から顔を覗かせた。

「一応、今は作戦決行中な訳だから、つい癖でさ」

「さっきの会話は聞いてた?」

「ああ、いったい何の意味があるんだ?」

「逢坂さんの術の特徴を探ろうと思って。術にかかる条件とかが分かれば有利かもしれないし」

「ああ、それで四年生か」

 尾浜君の納得した様な表情に私も頷く。
 上級生の中でも最年少。そして下級生の中で最年長。下級生と上級生の間にいるのが四年生と三年生だ。
 三年生は影響を全く受けていない、ここに術にかかるボーダーラインがあるのかもしれないと私は思った訳だ。

「でも、尾浜君にも聞いておきたいな。なんでかからなかったか、自覚とかってある?」

「うーん……実は俺、一度やばかったんだよなあ」

「え?どういうこと?」

「逢坂さくらに誘惑されそうになったってこと」

 なんだと初耳だぞそれは。
 尾浜君は罰が悪そうな顔をする。

「詳しく聞かせてくれる?」

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