理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□世間ではそれを煽りという
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 静まり返った食堂で私と食満先輩が睨み合っている。
 皆先程、私の噛んだ台詞に盛大にずっこけたがそれぞれ各自のお盆は死守していた。君達器用だな。


「……何だって?」

「食満とめしゃぶろー先輩っ!勝負だ!!」

「言い直した上にまた噛んだ!?」

 尾浜君の的確な突っ込み。
 三郎が笑いを堪えて震えてるのが目の端に映る。テメー許さん。

「ほお……」

 食満先輩のつり上がった眉がぴくりと動く。私の台詞はまだまだこれからだ。

「貴方はこの学園一の武闘派だと聞いた。しかし、実際の貴方を見ていたが闘うことは愚か、実技の授業すら出ず、自主鍛練すらしていないと来た!!正直がっかりだ!!!」

 ある程度事実なんだから仕方ない。
 だが、食満先輩の表情がぐっと険しくなってくる。

「そんな貴方が学園一の武闘派等、この学園の沽券に関わる!だからこの僕が貴方を倒しっ、新たな武闘派として学園に君臨させて貰おう!!!」

 ビシッと食満先輩を指でさしながら一気に捲し立てた。
 以上!脚本は鉢屋三郎だっ!!

 おぉぉーっ!という三年生達の歓声。

「今度は噛みませんでしたね」

「……見事な、煽りだ」

 と三之助に中在家先輩。

「お前、確か、最近この学園に来た編入生だったな。他所からやって来たばかりの奴にここまでコケにされて……食満留三郎!ここで退いては、男が廃る!!!」

 ひいぃー!煽りの効果は抜群だ!
 食満先輩の背後に闘気が!憤怒の炎が見えますよ!?

「その勝負っ。受けて立とう!!忍術学園の武闘派がいかなるものか貴様に叩き込んでやる!」

「ではでは!会場設営、準備等々は我々にお任せくださーい!」

 三郎に尾浜君が待ってましたとばかり私達の間に入る。

「開始は午後から。会場は演習場。両者宜しいでしょうか」

「おう」

「藤山、ここで一言っ」

 と三郎が小さく囁く。

「くっ首を洗って待っていやがれ!!」

 念には念を、煽りに次ぐ煽りだ、内心ガクブルやで!

「ふん。その言葉そっくりそのまま返してやる。それと、」

 食満先輩はギッと私を睨み付けた。

「俺の名前はとめしゃぶろーではなく、留三郎だ。藤山葵」

 そのまま私達に一瞥をよこし、食満先輩は食堂を出ていった。

 私達三人も遅れて食堂を後にする。

「藤山、霞はどんな様子だ?」

「三郎の予想通りだね、弱冠だけど薄くなってるよ」

「よし。流石は武闘派熱血野郎」

「じゃあ、俺達は準備してくるよ」

 三郎と尾浜君は先を急ぎ出す。

「……ねえ、本当にやるの?」

「藤山葵。ここで退いては男が廃るぞ」

「…………」



 かくして鉢屋三郎監修。『武闘派には武闘派、ガチンコタイマン作戦』が幕を開けた。

 舞台は用意された。やるっきゃないのである。



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