理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□次回ッバトル展回!!
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「悔しい!!どうしてなんで僕は負けるんだああああ!!!」
忍術学園、五年生の組み手の授業。私は元気に叫んでます。
「これが実力と経験の差という奴だな藤山」
涼しい顔をして笑っているのは先程私を投げ飛ばした三郎。お前、本当容赦ないよな。
一応、夢では近接戦を中心に訓練してる筈なのに、実際にやると中々上手くいかない。
まあ、人を蹴ったり殴ったり等に心理的抵抗が少なくなった分ましかと思う。
なんかこの世界に馴染んできてしまったなあと少し遠い目になった。
「良いところまでいってたよ藤山君」
「何発か蹴りも入っていたしな」
「藤山はまず体幹を鍛えるんだ。小手先の技巧に頼りがちになって威力と精度が落ちているぞ」
クラスメイト達の励ましと先生の的確なアドバイス。
ふうっと私は顔の汗を拭う。
「よし!もう一度勝負だ!!三郎!」
「何度やっても同じだと思うがなあ」
「珠には俺達とも組んでくれよ藤山」
授業終了間近、お互い組んだ相手に良かった点と改善点を伝え合う様にと先生に言われた。
「藤山は先生も仰っていたが、小手先に頼りすぎだ。後、ここぞというときに大振りになるから見切りやすいんだよな」
「良いところは?」
「ちょこまかしていて鬱陶しいのと、避けんのは無駄に上手いからムカつく」
それは誉めてんのか。
「三郎の場合、動きに無駄がないし、精度が高いよな。武器の扱いも手馴れているし、」
「当然だ」
「ただ、持久力ないな。僕みたいにまだ集中力弱い相手なら良いけど、消耗戦に持ち込まれるとヤバイんでない?」
「ぐ……いっちょまえに」
授業終了、夕食を食べる前に顔を洗いに行く。
「おー。ぼろぼろだな藤山」
「尾浜君」
井戸には先客がいた。
「なんだ。い組も実習か」
「山間の戦闘訓練」
尾浜君もなかなかに、ぼろぼろだ。
「勘右衛門、俺、もう行くから」
「……ああ」
尾浜君の横にいた男の子がすっと離れていく。
「うっ」
目に生気がない。
濃厚な霞が目元を覆っている。何度見ても慣れないなこれ……。
「なんだ、兵助、授業出たのか」
「無理矢理引きずり出した。だけど、終始、心ここにあらずだったよ」
尾浜君が苦い顔をしている。
そうか、あれがへーすけか。
尾浜君は気を取り直す様に私と三郎に笑顔を見せた。
「ところでどっちが勝ったんだ?」
「四勝一敗で私の勝ちだ」
「おっ。一回は勝ったのか!凄いじゃないか藤山」
尾浜君がよしよしと私の肩を叩くもんだから嬉しくてへらへらと笑ってしまう。
私は実は誉めて伸びるタイプなんである。
「夕食の後も鍛練するから尾浜君も相手してよ」
「ははは、鍛練ってあの先輩達みたいだなあ」
「そうそう、勘右衛門。それで思いついた事があるんだ」
三郎を見るとニヤリと笑う。
……なんか、また碌でもない事考えてるなこいつ。
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