理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□腹をくくる
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七松先輩お風呂騒動を経て、私達はへとへとになりながら部屋まで戻った。
私の部屋の前まで差しかかった時。尾浜君と三郎が足を止めた。
私も、あれっと扉の前にいる人物を見る。誰だこの人。
「六年ろ組、中在家長次先輩!」
説明有り難う、三郎。
六年ろ組ってことは七松先輩と同じクラスだな。
彼とは対照的に落ち着いた雰囲気のある人だけど、顔が怖い。
表情もだけど、どうしても顔の傷に目がいく。ヤの着く自由業かよ。
「……を…たい」
え?なんつった今?
私の方を見ているから私に話があるんだろうけど声小さすぎやしませんか?
「藤山葵。君と、話をしたい……」
耳を澄まして、今度はなんとか聞き取れた。
然し私に話とは……顔は未だめっちゃ険しいし、な、なんか怒ってます?
まさかヤキ入れられるとかじゃないだろうな。
助けを求める様に尾浜君を見ると、彼はうんと頷いた。
「俺達もお聞きして宜しいですか?」
中在家先輩はこくんと頷いた。
緊張しながら彼を部屋に通す。私、三郎、尾浜君が彼と向かい合う姿勢になり話を待つ。
この部屋の威圧感ヤバイ。三郎達まで真剣なシリアスな雰囲気を出すから居心地が悪い。私はもぞもぞと身体を動かしていた。
「藤山葵」
「はっ、はい」
何を言い出すんだ!?
と固唾を飲んだ私は次の彼の行動に驚いた。三郎達も息を飲むのが分かる。
「礼を言いに、来た」
「え、あの」
中在家先輩が床に手を付き、深く頭を下げる。
あわあわしている私を彼はすっと顔を上げて見つめる。顔が険し過ぎて状況と合っておりませんよ!?
「小平太を、」
「え、」
「正気に戻してくれたのは、君だろう」
この人、もしかして……。
「中在家先輩、貴方はまさか……!?」
三郎も、尾浜君も信じられないと目を見開いている。
中在家先輩はそんな私達に小さく目を伏せた。
「……私は、逢坂さくらには、たぶらかされてはいない……」
「本当ですか!?」
ああ。と中在家先輩は頷いた。
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