理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で

□取り敢えず一旦セーブしようぜ
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「あ"ー……」

「のぅぅー……」

 放課後の教室。
 文机につっぷす私と三郎に、クラスメイト達は苦笑いを向けながらばらばらと教室を後にする。

「大丈夫かぁ、二人とも」

「馬鹿八左ヱ門、これが大丈夫に見えるか馬鹿……」

「ハチに八つ当たりすんな、さぶろー……」

 昨日はあのまま、ほぼ一睡もせず、もん兄ぃ率いる会計'sブートキャンプオールナイトだった。
 ほんとあんなハードな委員会に所属しながらアイドルやってる三木ヱ門氏は改めて凄いわ。

「いや、アイドルは自称か……どっちにしろ尊敬すんぜミキティ…………」

「葵は何の話をしてるんだ?」

「……知らねえよ、馬鹿なんだろ」

 三郎は疲労のせいか、悪口の語彙が著しく減少してる。

「「あ"ー……」」

 溜め息が被った。
 ハチは、乾いた笑いを立てながら肩を竦めた。

 さて、いつまでもこんなグダグダとはしていられない。
 私は懐からアミダくじの紙を取り出した。

「ふんっ!!」

 え、あれ、紙が消えた……

「って、三郎!?」

 三郎が私の手から奪い取った紙をビリっビリに破り去り、窓の外へぶんぶんと放り投げた。

「ごっ、ご乱心じゃ!ご乱心じゃ!!」

「何やってんだよ三郎!?」

 騒ぐ私達を余所に、窓の桟にばんと手を着き肩で息をしている三郎。
 えぇ……ほんとどうしたのこいつ怖い。

「おいこら、藤山……お前は馬鹿か」

「さっきから馬鹿しか言わないねあんた」

 三郎はぐいっと詰め寄る。
 うわ、目ぇ血走ってる、やだマジで怖いよぉ!!

「お前、んな適当にアミダなんかして体育とか体育とか体育が当たったらいったいどう責任取るんだ!!え!?」

「ちょ、おぉおお!?ドンシェイクミー!!!」

 肩を掴まれ、ぶんぶんと揺すってきやがる。三郎君マジでご乱心だ。

「体育限定かよ!?お、おいおい落ち着けよ三郎!!葵の顔色がヤバイから!」

 ハチが慌てて三郎の腕を掴んでどうどうと宥める。
 ぐえ、寝不足の人間揺するな吐くからマジで。

「うるせぇ!今の今までギンギンの幻聴が消えないこっちの身にもなってみろ、そこにイケドンなんて死出の道でしかねぇんだよ!!良いか!今日行く場所は私が決めてやる!!今日は、」

「呼んだか?」

「「「呼んでません!」」」


 ……あんたのせいだ、あんたのせいだよ三郎!!!
 なんで来たんだって小声で叫んだけど、あんたが「体育」とか「イケドン」とか叫ぶから御本人様降臨しちゃったんじゃないか!!!

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