理不尽に爛漫に/道理に叶って絢爛で
□取り敢えず一旦セーブしようぜ
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「そうか?今、体育とかイケドンとか聞こえたんだが」
ほらな。
「あっはっはー……き、気のせいじゃないでしょーかねー?」
きょとんと目を瞬かせて私達の顔を見比べるイケドン体育委員会委員長、七松パイセンに私達の顔は引き釣るしかない。
「おお、そうだ!鉢屋と葵は昨日は会計委員会に行ってたそうだな!!」
「あ、はい」
「文次郎が中々楽しかったと言っていたぞ」
もん兄ぃが「楽しかった」とか、んな可愛い事言うの!?
絶対語弊か誇張があるだろ。そして、いきなりそこ着いてきますか!?思わず口に出してギクッって言いそうになるわ。
「で、今日は何処の委員会に行くんだ?」
「え!?えっと、……あー……」
ひぃー、止めて止めて!期待に満ちたキラキラ、否、ギラギラした目で見つめないで七松パイセン!!!
つーか、三郎。さっきから沈黙してっけどお前のせいだろなんとかしろ。
私は三郎を横目で睨み付けた。
「……え」
し、白目剥いてやがる……!?
馬鹿野郎!思考放棄してんじゃねえよ!!!
ハチはおろおろと私達と七松先輩を見比べて、七松先輩は私に視線をガッツリロックオンしている。
あー、駄目だこれ、終わった……。
「えっと、じゃあ、た、た、体育、で……」
精神が拒否しているせいか、超ドモッた。
七松先輩はポカンとした顔になり、首を傾げる。
「……体育は今日じゃなくて良いぞ?」
「「え!?」」
あ、三郎復活。
七松先輩はにかりと笑って私の右腕を指差す。
「右腕の故障が治るのは後三日ぐらいらしいな。いさっくんから聞いている」
「え、あ、はい」
「体育委員会は身体を沢山動かすからな。それが治ってから来い」
「…………」
「ん?」
「あ、わ、分かりました……」
ちょっ、ヤバイヤバイヤバイ……!七松先輩めちゃくちゃ輝いて見える!!
色を禁じられてる身なのに一瞬ときめきそうになったじゃないか!!
「色々準備してるからな!楽しみにしているぞ!!」
じゃあな!と、爽やかな満面の笑みを浮かべながら私と三郎の頭をぐしゃりと撫でて、七松先輩は教室を出ていった。
気配が完全に立ち去るのを待って、私達三人は深々と溜め息を吐く。
三郎なんかはへなへなと崩れ落ちて畳にごんと頭を着いた。
「……た、助かったな、お前ら」
「暴君にあるまじき良識を見せたな。こりゃ雨が降るかもしれん」
「三郎、そんな事ばっか言うから先輩達に嫌われんだよ」
三郎は私の注意を、ふん、と鼻で笑い飛ばす。
さっきのピンチは自分のせいだって事を分かってんのかなこいつは……。
「で、今日は何処行くの?」
むくりと起き上がった三郎に聴けば、へにゃんとした笑顔を見せる。
「そりゃあ、今は此所にいない私の癒しの元に決まってんだろ」
「不純極まりない決定だな、おい」
でも、まあ、私も全面的に賛成だ。
昨日は色々と濃かったから今日はちょっと休みを入れたい。
私が分かったと言えば、さっきまでのグデグデっぷりが嘘みたいにいそいそと廊下に踏み出す三郎である。早く来いと促されて、私も立ち上がった。
「じゃ、行って来るよハチ」
「おう。……三郎の暴走に気を付けろよ」
……小声で不安になる事を言わないで欲しいなあ。
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