*それぞれの艶物語*

□古高俊太郎〜花end後〜その後の二人
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東京 某ホテルの一室

「お、お邪魔します…」
 と、タオルで胸元から下を隠しながら、バスルームの前でガラス張りのドア越しに中へと声をかける。すぐに、俊太郎さんの優しい声が返ってきて、私はそっとドアを開けた。
 こちらに背を向けたまま、体を洗っている俊太郎さんに歩み寄り、差し出されたボディタオルを受け取る。
「こないして入るんは初めてやね」
「…ですね」
(こんなに俊太郎さんの背中って広かったっけ…?)
 背中を洗いながらそんなことを思う。
 いつも、どちらかが琴乃をお風呂に入れているからというのもあるのだけれど、そう言われてみればこんなふうにして一緒に入るのは初めてかもしれない。
 あの、秋斉さんと夏実さんの結婚式から半年が過ぎた今日、また龍馬さんによって集められたみんなとの、いわゆる同窓会が行われたことによって、私達は久しぶりに東京のホテルへとやって来ていた。


 都内でも、割と有名な高級ホテルのレストランの一部を貸し切ってくれたのは、例の如く慶喜さんで。みんなが集まればそれぞれの話題で盛り上がらないはずもなく。
 新たに始まった高杉さんと土方さんのドラマのことや、その後の龍馬さんと高杉さんの恋の行方のこと。そして、翔太くんと沖田さんにも気になる人が出来たことなど。
 なんといっても、夏実さんが新たな命を授かったことに対しての祝福の声が途切れることはなかった。
 照れながらも、父親になるということがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。と、言っていた秋斉さん。その隣、秋斉さんを見つめていた慶喜さんの、感慨深げな表情も印象的だった。
 そんな話を聞いたからだろうか。お義母さんたちが、琴乃を預かってくれると言ってくれた時は、久々に二人きりになれると思って嬉しかったのだけれど、いざ琴乃がいないと、何となく寂しいような…張り合いが無いような気がする。
「もう、ええよ」
 と、ほんの少しこちらを振り返る俊太郎さんにタオルを返すと、俊太郎さんはシャワーでそれを濯ぎ、湯を体へあてる。たちまち、泡が流れ落ちると共に視界が白い湯気でくゆりはじめた。
 次いで、促されるまま入れ替わるようにして俊太郎さんの座っていたバスチェアへ腰を下ろし、曇りかけた鏡越し、今まで使用していたタオルを腰元に置く俊太郎さんを気にしながら持参したタオルをボディーソープで泡立てる。


 その傍から、密着する素肌。
「…ぁ」
「どないしたんや」
「あんまり、見ないで下さいね」
「見ないと洗えへんやろ」
 耳元を掠める悪戯な吐息に肩を竦めながらも、背後から手にしていたタオルを奪われる。これまではこんなに明るい場所で触れ合うことなんて無かったからか、今更のように恥ずかしさが甦って来てしまう。
 だから、タオルを奪い返し胸元を隠してみる。
「あ、明るいから…恥ずかしくて」
「もう、何度も目にしとるのに」
「それに、お、お風呂場でって…」
「初めてあんさんの、白肌を目にした時も確か…風呂場やったはず」
 初めて、二人だけで宿泊した旅館の露天風呂に入り、


『優しうする。ただ、歯止めが利かへんようになったら…堪忍や』


 その晩、ようやく私達は一つになれた。
「あの時は暗めの照明だったから…」
「今も、口付けとうなるほど綺麗や」
「…ん…って、もうしてるじゃないですかぁ」
 肩からうなじにかけて柔らかな唇が辿りあがってゆく。その、ぞくぞくとした感触に身を震わせた。その時、
「…そない表情(かお)して、煽らんといて」
 胸元に添えていた手を包み込まれ、タオルが私の手ごとゆっくりと離れてゆく。
「そ、そんなつもりは…」
「せやろか、」
「んっ…」
 近づいていた端整な唇に声を塞がれ、自分の手を離れたタオルを自由に扱う俊太郎さんの指先により、胸元がすっぽりと覆われてしまう。
「…んっ…」



 弱い部分を攻めたてられたことよりも、私を求めてくれるこの唇によって全身の力が抜けていくのが分かる。
 長い口付けから解放された唇を震わせたまま、息つく暇もなく繰り返される愛撫。巧みな指の動きと、滑るように肌の上を這う柔らかな唇の感触に耐えきれず…
(もう、もう…)
 降参して、俊太郎さんのうなじに腕を回して再び口付けた。
 触れられるだけで、甘い声を聞くだけで。
 全身が、心が震える。
「何か言いたそうやね」
「…っ…」
「ゆうて」
「………俊太郎さんが……欲しい」
 それからは、もう夢中で俊太郎さんを抱きしめ。部屋へ戻ってからも、これ以上は無理だと思えるほどの愛を貰えた。

 そして、改めて思った。
 きっと、私はこれからもずっとこの人を欲しがり続けるだろうと…


【END】


※二人を描きたかったのですが…かなり違う感じになってしまいました(;^ω^)
俊太郎さまのイメージが壊れたらすみません;



 

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