*それぞれの艶物語*

□藍屋秋斉「温泉♪おんせぇぇん♪」(後編)
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【温泉♪おんせぇぇん♪】*藍屋秋斉*後編をリベンジ編(笑)



襟元に添えられた○○の指先から伝わる熱を受け、秋斉は抑えきれない衝動に駆られた。

たった今、口走った己の言葉に戸惑うも、想像以上の色っぽい瞳から目が逸らせなくなり。


触れたくて、
ふと、手を伸ばしてしまった。

ほんの少し開かれた障子から畳まで、外からの藍色にしっとりと染まる部屋に、灯された暗めの火が徐々にその勢いを失っていく中。

視線は絡まったまま、ふと気づけば○○の小さくて温かい手の平を左頬に受け止めていた。

「すまない…」
「え…」

秋斉はその愛しい手を握りしめ、距離を置こうとした。

刹那、指を絡め取られ引き寄せられた。

「やっぱり…私では秋斉さんの支えにはなれない?」
「…いや」
「なら、どうして…」
「……酒に呑まれただけや」

お互いに視線を外したまま沈黙するも、喉の奥から咽返るような息が漏れる。

(これ以上触れていたら…歯止めが利かなくなる)

絡まった手を離し、ゆっくりと立ち上がると、秋斉はほんの少し開いたままの障子から差し込む微かな月明かりに照らされ始めた。

じき、○○の手が秋斉の胸元に添えられ、「…分け合いたいんです。苦しみも、悲しみも。そして、喜びも」と、己の背中に頬を埋めている○○の今にも消え入りそうな声を聞く。

泣かせるつもりも、困らせるつもりも無い。

(ただ…)

「…きっと、私には分からない苦労が沢山あるのだと思います。でも、だからこそ…分かち合いたい。秋斉さんが、もしも、私のことを心から信じてくれるのなら…」

(この子は……どうして…)

か細い指を絡め取り、己の胸に抱き寄せてすぐ襟元に小さな吐息を感じ。秋斉は、これまでの想いが喉から零れるのを抑えきれず、静かに口を開いた。

「こんなにも愛おしいとは…」
「秋斉さん…」
「あんさんを幸せにしたい。これが、わての本心どす」

頬をつたう○○の綺麗な涙が銀色に光って見える。

たったこれだけの言葉を伝えるのに、どれ程の時を有したのだろうか。

大切な人を守りたいが為、己の真意は胸の奥に閉じ込めたまま。その為にこの子は、どれだけの侘しさを感じていたことだろう。

ずっと、この手で抱きしめたいと思っていた柔肌が、すぐ傍にある。

(これは、紛れもない現実…)

いつものように優しく指で拭うことで、自然と閉じられる○○の目蓋。

濡れた睫毛を見つめた。刹那、

「…んっ…っ…」

情欲のまま、可憐な唇を奪っていた。

触れた途端、
抱きしめていた肩が小さく揺れると同時に、甘い吐息を耳にする。

「…………」

合わせる度により深く奪い続ける唇。

秋斉は、○○の肩と腰元を支えながらゆっくりと畳の上に横たえ、親指の腹で濡れた唇に触れた。

「今度は本気や…」

下唇をなぞり、首筋へと流れてゆく指先が襟内の更に奥へと滑り込ませ、乳房を掠めながら肩を着物の下から手繰り上げるように襟元を開いて行き。

「あっ、秋斉…さん」

露わになってゆく首筋、肩、胸元へと唇を滑らせる。

徐々に大きくなる快感を堪えるような声を耳にしながら、秋斉は更に開いたことで露わになった小さな蕾に舌を絡ませた。

「…んっ…」

時に唇で挟み込むようにして、反応を見る。

秋斉の腕に触れていた○○の指先が熱を帯びながら爪を立てるも、そんな鈍い痛みさえ彼の情欲に拍車をかけ、

やがて、もう片方の襟も腰元までずらし、新たに露になったもう片方の乳房をその手の平で包み込む。

「…っ…」

柔らかなふくらみを玩ぶ手はそのままに、胸元から首筋まで、唇で這うように上がってきた秋斉の熱い息遣いが、○○の耳元を掠めた。

「やはり、止めるか?」
「…っ……」
「これ以上続けたら、止められへんようになるさかい」

そう言いながらも、秋斉の手は止まる事は無く…

胸元にあった手は下へと滑り落ちていき、裾から入り込んだ後、太腿を辿り上げていく。

「……どうする」

○○の切なげな表情を目にして、今すぐその何もかもを奪いたいという衝動に駆られつつ、○○の首筋に唇を這わせながら、堪えきれず少し荒さを増した吐息が零れるのを抑えきれずにいた。

「…っ…私は…」

内腿をなぞるその手の平が、時に強く円を描くように動く。

次いで、戸惑ったままの○○の首筋に唇を埋めている秋斉のしなやかな指先が秘所へと滑り、

「あっ……」
「……早く答えないと、本当に止められなくなるが…」

それでも、いいか?と、言いながら奥へと侵入して来る指に耐えられず、○○は初めて大きな声を漏らした。

「ああぁっ…あ…」
「…声もええな」
「…っ……」
「せやけど、そない大きな声……気ぃつけへんと誰かの耳に届くやもしれへん」
「……!!」

ここは、秋斉の部屋。

改めてそう意識して、恥ずかしさと嬉しさとが綯交ぜになりながらも、○○はただ秋斉の思うがままに身を委ねると、

蜜口の奥へと辿り着いた太い指先が、滴り落ちる蜜を絡めながら、驚くほど繊細にそれを掬い上げる。

「……んっ…」

快感に耐えられず股を閉じようとすると、秋斉の手がやんわりとそれを制し、開かれてはまた閉じの繰り返し。

「あ、秋斉さん…私…」

指はそのままに、秋斉の熱い息遣いが再び○○の耳元を擽った。

その指が、溢れる蜜に絡まる度に奏でられる音と、○○の色っぽい息遣いも重なって、さらに熱を帯びてくる蜜口に触れながら秋斉は心をかき乱される。

次いで、背中に手を回し軽がると持ち上げるなり、スルスルと帯を解き始めた。すでに乱れていた帯と腰紐は簡単に解け、窮屈さから開放された着物は左右に落とされた。

「……綺麗や」

消えかかった行燈。

○○は羞恥心から、秋斉のうなじに手を回し引き寄せた。

「もう、止められへんえ」
「……あっ、秋斉さんの…温もりを下さい…」
「…あんさんの温もりもな」

お互いに耳元で囁き合うと、秋斉は○○の手首を取り首筋に啄むような口付けを落とし、露わになったままの蜜口へと指先を添え、再び奥へと指を押し入れた。

「ん…っ」

受け入れた秋斉の指が、○○の一番感じる部分を探し当てる。

「んっ、あぁっ…」

身の奥で感じ始める鈍い痺れ。

発する息遣い一つ一つが、秋斉に自分の弱い部分を教えているようなものだった。

思わず秋斉の腕を掴んで小さな抵抗を試みるが、その手を片手に纏めらてすぐ頭上へと追いやられ、両手首を押さえ込まれた状態のまま、自分に向けられている妖艶な瞳を見つめた。

「…いいか?」
「あ、」

低く抑えたような声を耳にして、○○は瞳を潤ませながら小さく頷く。

まだ戸惑いの色を浮かべる○○の目蓋に口付けを落とし、秋斉は目を細めた。次いで、抑え込んでいた両腕を解放し体勢を変え、閉じられていた股の間に身体を割り込ませ、そっと覆い被さった。

「…あ、秋斉さん…」

今までの指とは違う圧迫感に身を震わせながらも、秋斉自身を受け入れて間もなく。

「…あ…ンッ…」

圧せられ、感じたことの無い痛みと快感に、○○は全身が痺れて行くのを感じた。

○○の真上。

秋斉は着物を諸肌脱ぎ、次いで完全に脱ぎ終わるとその辺に放った。

その抱擁に心を震わせながらも、いつの間にか律動を始めていた秋斉の首に手を回すと、ゆっくりだが、でも確実に自分の中で秋斉の動きは大きくなり、息遣いも激しいものへと変わっていく。

「んっ……ふ、…ン…っ」

徐々に、身を震わせるような感覚に支配されてゆき。絶え間なく、幾度も揺さぶられ、体ごと上へとずれ動いてしまう。

「あっ…きなり…さ…」

もう、自分がどんな声を発しているのか、どんな痴態を晒しているのかも分からないまま。

やがて急速に、奥の方で何かが弾けるような感覚にとらわれるのを感じ、○○は秋斉の両腕に触れながらそれに耐えていた。

とうとう行灯の火が消え、漆黒の闇に包まれる中。

○○の体を鋭い痺れが駆け巡り、弾ける快感と同時により強く、腰を押し遣られた。

「あっ…ん…」

お互いの肌が重なり合い、温もりを分け合うと同時に限界を感じ始めるも、己の愛を必死に受け止めようとしている○○を、秋斉は心から愛しいと思うのだった。

「…ンッ…ん…」

下に敷かれたままの襦袢を力強く握り締め、その快感にひたすら耐えようと爪先を伸ばしてみれば、それに気付いた秋斉の優しい手が、○○の手を包み込む。

「秋斉さっ…好きですっ…もう、この手を…離さないでください…」
「もう、二度と…」

そして、二人はしばらく切なげな吐息を漏らし、背を逸らして弛緩する○○を見届けると、秋斉はそっと体を離し、文机の上に置いてあった懐紙の内に精を吐き出した。


気が遠くなる中、○○は畳の上に乱雑に敷かれていた着物を、力ない手で胸元に手繰り寄せ。薄れ行く意識の中で、息を弾ませながら浴衣を纏う、秋斉の姿をぼんやりと見やる。

秋斉は、着物を簡単に羽織ったままの状態で行灯に火を灯し、再び、ゆっくりと上体を起こす○○の隣りに腰を下ろすと、そっと肩を抱き寄せた。

「…あ、まだ私…」
「このままでいい」

着物で胸元を隠していただけの○○は、そっと着物を体に巻きつけ、秋斉の大きく開かれたままの胸元に寄り添う。

「こない乱されるとは…」
「秋斉さん…」
「…もう、離さへんよ」

そう言うと、秋斉は慈しむように抱きしめながら露わになったままの肩に口付けを落とした。

想いの数だけ口付けを交わし合い、触れ合い、分かち合う。

(…どんなことがあっても、この手だけは放してはならない。)

想い、想われ。
恋、焦がれ。

「この人の傍にいられるなら」と、想い。

「この子と共に生きたい」と、想う。

「この人の太陽でいたい」と、願い。

「月のようにこの子の寝顔を見守りたい」と、願う。

愛しさと切なさの中で、二人。

いつまでも、お互いの想いを感じ合っていた。



【終わり】
 

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