*それぞれの艶物語*
□高杉晋作「慕情」
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【慕情】*高杉晋作*
「涼しい……」
置屋の玄関を出るとすぐに、夜風がほんの少し汗ばんだ首筋をひんやりとかすめ、さらに顔を上げてその風を受けていると、夜空に綺麗な満月を見つけ感歎の声をあげた。
「うわぁ……なんて大きな満月」
(高杉さん…今、どこで何をしているのだろう?)
同時に彼を思い出して、胸がほんの少し苦しくなる…。
彼に会えなくなってもう、が過ぎていたから…というだけではなくて、私が会いたいと思っても、それは叶わず…いつも、恋焦がれる日々が続いていたからだった。
あの日……。
バレンタインのお菓子を食べて貰い、その後、私の舞や三味線を披露して…。
そして……。
彼は、私の全てが見たいと言って優しく抱きしめてくれた…。
「○○…今夜は、お前の全てを見せてくれ」
「…えっ?」
「大門が閉まるまでの間だけでいい」
そして彼は、私を抱きしめながら、「いつか…全てが終わったら、お前を迎えに来る。その時こそは、俺の女になれ」と、言って微笑んでくれたのだった。
いつも突然現れて…言いたいことだけを言い、夢中にさせるだけさせてすぐにどこかへ旅立ってしまう…。
こんなに辛い思いをするくらいなら、いっそ彼のことを忘れてしまおうと思ったこともあったけれど、そう思えば思うほどかえって彼のことが忘れられず、心が揺れ動き切なくなるのだ。
そして、いつも情熱に満ち溢れた彼は、時に死に急いでいるようにも見えた…。
(……元気でいてくれたら、それで…それだけで…)
軽い動悸に襲われながらも、私は月を見上げながら揚屋を目指し歩き出した。
いつものように、揚屋で番頭さんから声をかけられお座敷へ向かうと、そこで私を待っていてくれたのは、たった今まで思い描いていた大好きな人の笑顔だった。
「……た…高杉さん…」
「見違えたぞ……○○」
「……っ……」
思わず自分の目を疑いつつ、言葉を詰まらせながら彼の傍へ言ってお酌をすると、彼は美味しそうにお酒を飲み干した。
「お久しぶりです…今夜、高杉さんに会えるなんて…」
私は今にも涙が溢れそうになるのを堪えていると、そっと肩を抱き寄せられた。彼の広い胸に寄り添いながら、その懐かしい温もりに身を委ねる。
「あの頃よりも、数段綺麗になったな…」
「ありがとう…ございます……」
「俺と会えなくて寂しかったか?」
「……とっても…」
素直な気持ちを口にすると、彼は少し驚いたような顔を見せたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
「今夜は、ゆっくり出来るんですか?」
「ああ…」
「でも、また…会えなくなってしまうんですよね…」
そう呟きながら俯いた私の口元に、彼のしなやかな指が触れると、その端整な顔が近づきそっと唇を塞がれた。甘くて優しい口付けにうっとりとさせられ、思わず小さな声が漏れる。
「……んっ…」
彼は、ひとしきり長い口付けをすると、そっと唇を離し、「今夜はお前を迎えにきた…」と、囁いた。
「迎えに?」
「待たせたな……」
「それって…もしかして……」
「ああ……今夜、お前を身請けした。俺の妻として迎え入れる」
思わぬ言葉に目を大きく見開いていると、彼はくすっと笑って、私の髪に乗っていた簪を取り、髪結い紐を解きはじめ……
整えられていた髪がバサッと落ちると、その乱れ髪に触れながら耳元で囁いた。
「お前はただ、俺についてくればいい…」
「……はい…っ…は…い…」
彼は、感極まった私を見つめると、ゆっくりと立ち上がりもう一つの部屋の襖を開け、一式敷かれた布団の上に胡坐をかいて座り込んだ。
「………来い」
「……あっ…」
私は、ゆっくりと立ち上がり彼の隣りに腰を下ろすと、同時に激しく押し倒された。
「もう、俺だけのものだ…誰にも渡さん」
「高杉さん……」
「これ以上無いほど、お前を愛してやる…」
「……はい……」
小さく頷くと、荒々しく唇を奪われると同時にその場に押し倒された。その激しい口付けに戸惑いながらも、彼の首に手を回し必死にそれを受け止めようとしていた。
狂おしいほどの口付けを受け止めながら、時々漏れる彼の切なげな声と、顰められた眉を見つめる。
こんなにも激しい愛情を受けたのは初めてだった。
いや、男の人にこんなふうに抱かれること自体が初めてだから、どんなふうに返したらいいのか分からないままだったけれど、そんなことはもう、どうでもよかった…。
上手く受け止められなくても…。
ただ、この人の深い愛を受け止めたいだけだったから。
やがて、帯と着物を脱がされ長襦袢の前を開かれると、彼のしなやかな指が乳房に触れた。
「……あっ…ん…」
同時に、端整な唇が私の首筋を擽り、ぞくぞくとした快感に襲われ始める…。
「高杉さん…わたし…」
「……分かっている。すまん、抑え切れなかった…」
耳朶を遊ばれながら、掠れたような声で囁かれると、胸元にあった彼の手がゆっくりと腰紐を解いていく。
激しさは徐々に無くなり、その物柔らかな言葉は逆に私の心を擽った。
やがて、腰紐が解かれ下半身があらわになると、彼の温かい手が一番感じる部分に触れ始めた。
「ああっ……」
「もう、こんなになってるぞ…」
そう言うと、彼はまた指をそっと動かしながら、あらわになった胸元に舌を這わせた。
「い、いやぁ…あっ…」
「嫌なのか?」
「んっ……そ、それは…」
「ここはもう、こんなに俺を欲しがっているが…」
妖艶な眼差しで見つめられ思わず首を背けると、彼はすーっと舌を這わせながら胸の谷間や臍を通り、足の付け根に到達した。
そして、その熱い舌が太腿へと滑っていく…。
「あああっ…もう、わたし…」
「……次はどうして欲しいんだ…」
「高杉さん……お願い…」
何もかも始めての感覚に彼の肩を強く抱きしめ、何かを懇願していた。
でも、どうして貰いたいのか…自分でも分からないまま…。
強く抱きしめられたい…。
彼を受け止めたい…。
でも、やっぱり怖い……。
様々な思いが頭の中を過る中、彼は自分の帯を解くと、私の膝を熱い舌で舐め始めた。
「……んふっ…」
「初めてにしては、色っぽい顔をするんだな…」
「そんな……こと…」
ふと、顔を上げた瞬間、彼の手が自分の胸に触れる様子を目にして、頭が真っ白になると同時に身体中が震え始める…。
(…もう、変になってしまいそう…)
彼は、しばらくの間、私の反応を確かめるかのように攻め立てると、やがて、浴衣を脱ぎ去り、再び私の耳元に両手をついて上から見下ろしながら言った。
「……もう、限界だ。入れるぞ…」
「……っ……」
彼は躊躇っている私に、「俺に触れていろ」と、言って私の手を握り締めた。
「高杉さん…」
「俺のことだけを考えていればいい…」
私は震える手で彼の胸に触れ、その胸もトクントクンと大きく跳ねていることに気がついて、私はもう片方の手で彼の頬に触れた。
「私は…高杉さんのことしか考えられません…」
彼はその言葉にふっと微笑むと、私の指に口付けをしながらゆっくりと腰を近づけた。
「んっ……あっ…あああ…い、いたっ…」
「大丈夫か……」
「だ、大丈夫…です…」
「我慢はするな…」
それから、彼の腰がゆっくりと動き出すと同時に身体中が痺れ出し、小さな快感と大きな痛みに襲われ、私は必死に彼の背中を抱きしめた。
「……んっ…はぁ…あっ…」
耳元で、彼の息遣いを聞きながら、私は腰の動きと共に小さく声を漏らし始める。
枕元にある行灯に照らされた彼の表情はとても色っぽく、眉を顰めながら時折、閉じられる瞼がとても切なげに見えた。
そして、しばらく重なり合ってお互いの温もりを感じあっていると、痛みが徐々に薄れ始め、自分からも腰を動かしていることに気がつく。
誰かに聞かれないように声を抑える中、恥ずかしい気持ちと、もっと激しく愛して欲しい気持ちとが綯交ぜになり、私はまた彼に懇願していた。
「……もう、私…」
彼は、激しく腰を動かしまた私に覆いかぶさると、激しい口付けをくれた。時々漏れる彼の気持ち良さそうな声と、私の淫らな声が部屋中に響き渡る……。
やがて、彼は私を強く抱きしめたまま切なげな声を上げると、大きく身体を震わせた…。
「はぁ……はぁ…」
彼は、息を弾ませながらそっと身体を離し、そのまま仰向けになって息を整え始めた。額に手を乗せて息を弾ませるその横顔は、とても穏やかに見える…。
「○○……」
彼はこちらに向き直ると、私の前髪をかきあげながら微笑んだ。
「お前は最高の女だ…」
「高杉さん……」
「こっちの相性も良いようだからな…」
「……もう、そんなことばっかり…」
彼は、呆れる私の顔を見ながら楽しそうに笑うと、「そんな俺に惚れたのはお前だろう」と、言った。
そう、私は彼が好きで好きでしょうがない…。
自分の選んだ道を信じ、それだけを見つめて突き進んできた彼が…とても愛おしい。
そして、彼の胸に顔をうずめ、改めて想いを告げる…。
「……ずっと、一緒にいさせて下さい」
「ああ、これからは何があってもお前を離さん…」
微笑む彼の顔を見つめ、こちらも微笑みを返す。
夢じゃないことを確認するかのように、私はいつまでも彼の温かい胸に寄り添っていた…。
<おわり>
〜あとがき〜
お粗末さまでした!
。・゚・(*ノД`*)・゚・。
やっとこです!!駄作駄文ではありますが
高杉さん書けましたぁ
以前も書きましたが、他の作者様の高杉さんを読んでいると、それで満足してしまって(笑)ついつい、得意分野の龍馬さんや、沖田さんの方を優先してしまいがちになってましたが…。
自分でも書いてみると、彼のやんちゃな部分と、強い部分と、男らしい部分を再確認しました。
やっぱ、高杉さん素敵です
あとは、翔太きゅんだけか…艶シーン書いてないのは…。
今回も、遊びに来てくださってありがとうございました