□たべて
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いつもの夕食中、ふと隣の不動のお皿の上にぽつんと残っているトマトが目に入った。綺麗にトマトだけが残っている。これはジャパンのマネージャーとして見過ごせない。
『まさか、もうご馳走様とか言わないよね?』
「おかわりしろって?」
いやいや違う。どこ見てんだ。白いお皿の上に乗ってる赤くて丸いものの事を言ってるんだよ。
『食べなよ』
トマトを指してそう言うと不動は眉間に皺を寄せた。バランス考えて入れてるんだからちゃんと食べてね、そう言いながら急かす。
「これぐらい食わなくったって変わんねぇよ」
『…ていうかさ、不動ってトマト嫌いなんだね。知らなかった』
いつも一緒に居たのに、そうわざとらしく泣き真似をして言えばキモイ、と鼻で笑われた。ひっど。
「学校同じってだけだろ。そもそもお前に好き嫌い言う必要ねぇし」
『ひどいなぁ彼女なんだからそれくらい教えてくれてもいいのに』
「ふざけんじゃねぇ、お前の彼氏になった覚えはねぇぞ」
こちらを見向きもせず不動はそう言う。言い方がきつい。しかしそれはいつもの事なのでとくに気にしない。が、少しくらいノッてくれてもいいのにと思う。
『とりあえずさ、トマト食べよ?』
チラッとこっちを見た後にトマトを掴む不動。それをゆっくり口に運んだかと思ったがその手は私の方に伸びてきた。
「ほら、あーん?」
唇に押し当てられ、反射的に口を開けてトマトを受け入れる。と、そこではっとした。何やってんだ私。いやでもこれはチャンス!
私はトマトを噛まずにそのまま不動にキスをしようと近づく。口移しだ。
「……何してんだお前」
一瞬きょとんとした不動だったけどすぐに口元を手で覆われて阻止された。あとちょっとだったのに!!ちぇ、仕方ない。
観念した私は口の中にあるトマトをゆっくり噛んで食べた。美味しい。
「あと2つ、ほら」
そう言ってまた1つを摘み、私の口元へ運ぶ。自分で食べてよ、と思うけれどあーんなんてされたら食べるしかない。不動がこんな事してくれるなんて滅多にないんだから。あーんてしてくれる時の顔がなんだかえっちなのはどうしてだろう。変な気分になるからやめてほしい。
「……恥ずかしいのか?」
恥ずかしいに決まってんだろ。
にやにやしながらそう聞いてくる不動にちょっとムカッとしたので、次のトマトが口元に運ばれてきた時に不動の指を噛んでやった。
「いって……!」
ざまあみなさい!しかし冷静に考えてみれば好きな人の指を噛むとかやばいな。私やばいぞ。野性的だ。
「お前……」
『自分で食べないからこうなるんです〜』
そう言い終わるのと同時に腕を引っ張られたかと思うと噛み付くようなキスをされた。
「ざまぁみやがれ」
不動はニヤッと笑った後に食べ終えた食器を片付けに行った。
『は…?』
今、何された…!?キスされた!?なんで……!?
『はぁ!?』
なんでなんでどうして!?今まで1度もそんなこと……。え、もしかして不動って私の事……すきだったり…。いや、あの平然とした様子は違うな。じゃあなんでキスしたの??
1人で混乱している私の頭上で押し殺したような笑い声が聞こえて顔を上げる。
「お前、あんま不用意に男の前で口開けんなよ」
ごちそうさん、不動はそう言って食堂から出ていった。な、何なんだあれは……。どういう意図で言ったんだろうか。と、ここで皆がいるということに気づいた私は先程までのやりとりを見られていたと思うと同時にぼっと顔が熱を帯びた。
周りをゆっくり見渡すと、驚いていたり赤くなっていたり興味無さそうだったり色々な顔がある。
『は、恥ずかしい……!!』
「イチャつくなら他でやれ……!!」
そんな吉良の叫び声が食堂に響いた。






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タイトルからえっちな話期待した人すみません。
あと別にオリオン設定にしなくても良かったきがします。


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