□どうしたんですか。
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最近はほんとあったかくて快適に過ごせる気温になってきた。
グラウンドでサッカーをやっている少年たちも汗をかいて楽しそうだ。
そんな少年たちに声援を送る少女たちも楽しそう。青春である。
はぁ〜、もうすっかり春だなぁ。
『そうだ、海行こう!』
あたしの発した言葉に先程までサッカー少年を見ていた少女たちが一斉にこちらを見た。
「 ナマエ ちゃん、今何て?」
『秋ちゃん、海行こう!』
秋ちゃんの手を取りそう言うと夏未ちゃんに大丈夫なのかと心配された。
『その大丈夫が何の心配なのか分かるよ。うん、大丈夫。あたしの頭は正常です』
「どうして海なんですか?」
春奈ちゃんが不思議そうに聞いた。
『春じゃん。ポカポカ陽気の春じゃん。まぁ、何ていうか海があたしを呼んでる、みたいな?』
「貴女、ただ遊びに行きたいだけでしょう?」
はい、そうです。遊びたいです。
皆でどっかに行きたかったんです。海じゃなくてもいいんだけど、この季節に海っていうのもいいもんだよね。
あたしの提案に春奈ちゃんと秋ちゃんは結構ノリノリで賛成してくれた。
「いいですね、それ!遊びましょう!」
「それに明日はちょうどお休みよ」
『それじゃ明日行こうよ!』
3人でそんなことを話してる側で夏未ちゃんのため息が聞こえた。
なんだかんだ夏未ちゃんも楽しみなくせにぃ!!



練習が終わり、部室で着替えを済ませた円堂たちに明日のことを提案してみる。
『皆!海行くよ!』
明日の朝から、そう言えば風丸や染岡らがこの季節にどうして海なんだ、と口々に言った。
『皆で遊びたいじゃん!そんな場所といったら海でしょ!!』
「いいな! 海!楽しそうじゃないか」
『さっすが円堂!分かってくれるね』
円堂の一言で部員のほとんどがその気になった。
やっぱりキャプテンの力は凄いね!円堂を味方につけたら百人力だよ。
あたしは隣にいた豪炎寺に声をかける。
『ね、豪炎寺も来るよね?』
「ああ、楽しそうだな」
そう言って豪炎寺はふっと笑った。
なんて眩しい笑顔なんだ!なんてかっこいいんだ…!
『眼福…!これはありがたやありがたや〜』
拝んでいると春奈ちゃんが明日の時間や集合場所の報告を始めた。楽しみだなぁ。
明日は豪炎寺の水着姿をしっかり目に焼き付けておこう。
『ところで、豪炎寺さん。』
「何だ?」
『明日はどんな水着を着るおつもりで?』
「普通の男用の水着だが…」
『ですよね!』
いや、別に何が聞きたかった訳でもないけどね。
なんていうか楽しみすぎて興奮してきちゃって!皆で海だなんて我ながらいいこと提案したよね!えらいぞあたし。
「オイ、 ミョウジ。顔がニヤけてるぞ」
『ごめんね鬼道! でも許してね明日になるまでの我慢だから』
「明日になったらもっと酷い顔になってるんじゃねぇの?」
後ろから染岡がそう言ったのが聞こえた。
『みんなー!明日は染岡来れないってー!残念だよねー』
「何勝手なこと言ってんだよ!」
『あーはいはい。』
突っかかってきた染岡を適当にあしらう。全く、自分からケンカ売ってきたくせに。
ふと、ケータイの時計を見ると6時を過ぎていた。
『あ、そんじゃ、あたし帰るねー!』
そう言って部室のドアに手をかけると背後から呼び止められ、振り返ると帰り支度を終えた豪炎寺が立っていた。
「待て、 ミョウジ。 俺も帰る」
ん?ん?これは?これはもしかして...一緒に帰るって解釈してOKかな?
豪炎寺に聞く暇もなく、部室からさっさと出ていった豪炎寺を追うようにあたしも部室を出た。


「楽しみだな」
隣からそんな言葉が聞こえた。やっぱり豪炎寺も楽しみなんだなぁ。嬉しい。
『うん! あたしね、海ももちろん楽しみなんだけどそれよりも豪炎寺が来るから楽しみって事の方が大きいよ!』
好きな人がいると何でも楽しさ嬉しさ倍増だもんね。
「そうか」
力の抜けた顔で優しく笑う豪炎寺にあたしの心臓は元気に動き回って大変だ。落ち着けと言っても聞いてくれそうにない。
「俺も、お前が来るから楽しみだ」
普段は聞けないような言葉。自分の耳を疑った。
『夢ですか?』
「現実だ」
『催眠術には?』
「かかっていない」
『いくらで引き受けたんですか?』
「本心だ」
神様、これは何の仕打ちですか。あんまりです。明日あたしの身に何か起きるんじゃないんですか。豪炎寺からそんなことを言ってもらえるなんてもう幸せすぎて今この場でバク転しちゃいそうです。出来ないけど...。
「明日は泳ぎを教えてやる」
『……あたしがカナヅチだってこと何で知ってるの!?』
「マックスが言っていた」
マックスめ…。恥ずかしいことをバラすなと言いたいところだけど、教えてくれるって言ってくれたからお礼を言いたい。ありがとうマックス。
『マンツーマンで教えてくれるの?』
「そのつもりだ」
豪炎寺は手の甲であたしの頬を優しくさすった。
『え……』
何が起きたんだろうか...?
あの豪炎寺が、あの豪炎寺がこんなことをしてくるなんて極まれなのに。
そんなこと普段しないからあたしの許容範囲超えますけど!?
『あ、あの..どうなされたんですか...?』
「ん?」
とても優しい表情であたしのほっぺをむにむにしてくる豪炎寺がかわいくてかわいくて。ん?て何だろう...。
その表情でそれは無いわ。反則だわ。
というかいい加減恥ずかしさMAXなんだけど...!!
「明日、楽しみだな」
もうダメだ。
こんな近くではにかむだなんてそれはあたしが耐えれないよ。限界になる前に教えて下さい。
『豪炎寺さん』
どしたんですか、問うと豪炎寺は目を細めてふわっと笑った。
「そんな気分だった」
そんな気分って何...!?
『明日は?』
「さぁな」

どうか明日もかわいいかわいい豪炎寺でありますように。








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あれですね。
豪炎寺って難しいですね。
わかってたんですけどね。



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