□まっかっか
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※力持ち 続編












私がひとりで選手全員分のドリンクを運んでたら井吹くんが手伝ってくれた。
あれから、私は練習中やいろんな時に井吹くんを目で追ってしまっている。練習をしている彼はすごく真剣でかっこいい。
不意にあの時の井吹くんの照れた顔を思い浮かべてはニヤけてしまう。
アホな私がとうとう本格的にアホになってしまったかなと、葵ちゃんとさくらちゃんに相談してみたところ二人はとてもかわいい笑顔でそれは恋だ、と教えてくれた。
それを聞いた私は自分でも驚くくらい冷静だった。これが恋なのか、と今まで人を恋愛対象として好きになったことがなかったけれど私はすとん、とその事実を何故か受け入れる事が出来た。



練習が終わり、夕飯の時間になると葵ちゃんとさくらちゃんは私が井吹くんの近くに座れるようにと協力してくれた。協力してくれたのは有難いんだけど、どうして正面なのか。とても食べずらい。
好きな人の正面でご飯食べるとか恋愛初心者の私にはなかなかの試練。
私はいただきますをしてピーマンの入った炒め物を口に運ぶ。美味しい、とぱくぱく食べているとそれを見た井吹くんが私に言う。
「ピーマン好きなのか?」
うん、と返すと意外だなと言われた。
「どういう意味よ?」
私の代わりにさくらちゃんが聞く。
「 ミョウジガキっぽいと思ってたからな」
私はそんな風に見えるのだろうか。
そうなのか、とさくらちゃんに問うと、確かにと苦笑された。嘘でしょ…初めて聞いたぞ……。ちょっとショック。
ふと、井吹くんの方を見ると彼のお皿にはまだ手をつけられていないピーマンが。もしかして。
『井吹くん、ピーマン嫌いでしょ?食べてあげようか?』
私のお肉と交換しよう、言うとすぐ断れられた。
「このくらい食える」
強がりと思える発言をした井吹くんはピーマンを口に運ぶ。眉間に皺がよっていてとても無理している様子。
そんな井吹くんに私は何も言わずに自分の箸の使っていない反対の方で自分の皿に乗っているお肉を井吹くんのお皿に移動させた。
その行為を見て井吹くんも渋々ピーマンを私のお皿に移しだした。
あれ?井吹くんそれ口つけた方の箸だよね。間接キスになっちゃうよ……??
なんて言えるわけもなく、ピーマンが移動する光景を眺めているとさくらちゃんが声を発した。
「ちょっと井吹!そっち側アンタが口に入れた方じゃない!反対側使いなさいよ」
さくらちゃんってば、私があえて言わなかったことを大声で。なんという空気…。
それを聞いた井吹くんは顔をトマトの様に真っ赤にしていた。
「な....っ!?」
『井吹くん...?』
私の方を見た井吹くんは立ち上がり、走って何処かへ行ってしまった。
『え……?』
その後、勿体ないから食べなければと井吹くんがくれたピーマンを食べていると、間接キスだということを思い出しては顔が火照った。







夕飯の片付けをしてからおにぎりを作って井吹くんの部屋に来た私はノックをしてドアを開けた。
「お前、何しに…!?」
『井吹くん、ご飯食べれてないでしょ?だからおにぎり持ってきたの』
そう言ってお皿を渡すとぎこちなくありがとな、と返ってきた。
「その、さっきはすまん...」
『いいよ、私嬉しかったよ!……あ、いや、なんていうかその、ピーマンくれたのが…その嬉しかったという意味で変な意味では……!』
「食べた、のか?」
『…食べたよ。ピーマン好きだし。』
美味しかったよ、と笑ってお礼を言うと井吹くんの顔がみるみる赤くなっていく。そして耳まで真っ赤にして俯いいた。
普段、キーパーとしてゴールを守ってる姿とのギャップ。かわいい、なんて思ったら体が勝手に動いて井吹くんの手を取っていた。
『あのね、私、井吹くんと間接キス?みたいなの出来て嬉しかったよ』
しまった、そうじゃない。何で勝手なことを言うの私のお口。これじゃ変態じゃないか。
『ご、ごめん!変なこと言った忘れて…!!』
そう伝えたと同時に、私の体が宙に浮いたかと思うとベッドの上に投げられていた。突然のことに呆然としていると布団が上から降ってきた。
ちょっと井吹くん!?これはどういう状況なの?さすがにこれはやばいですよ?布団から井吹くんの匂いがするんだもん。
『ねぇ、井吹くん』
「ちょっと黙ってろ」
このままだなんて生き地獄だ。
『やだ、出して』
「ダメだ」
『心臓に悪いよ』
「こっちの台詞だ、バカ」
こっそり布団の中から井吹くんを見ると、茹でだこの様に真っ赤になっていた。やっぱりかわいい。
それを見てクスクス笑っていると井吹くんに気づかれてまた布団をかけられた。
「もうお前出てくんな...」
そんなことしたら井吹くんが寝れなくなるよ、言うとしばらくの沈黙の後、お前の部屋で寝るだなんて言うから驚いた。
『それはダメ!!』
勢いよく起き上がった私を井吹くんは廊下まで連れ出して部屋の中へと戻った。
「さっさと自分の部屋に帰れよ」
出てくんなとか、帰れとか一体どっちなんだ。
『おやすみ、井吹くん』
閉まったドアに向かってそう言うとああ、とぶっきらぼうに返ってきた。

まだ先程の熱が冷めない私は夜風にあたるために外へと向かった。





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関係ないけど井吹くんの「来いよ」好きです。



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