□あなたの声で子守歌
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明日はヒロトの久しぶりの休み。
そのことを私が知ったのはヒロトが私の部屋に来た時だ。
『おかえり、ヒロト。いつの間に帰ってきてたの?』
もうお風呂にも入ってるなんて、そう言えばヒロトは私のベッドに腰掛けて答えた。
「 ちょっとナマエ を驚かせようと思ってね」
そう微笑んで言うヒロトの思惑通り私は驚いた訳だ。やられたなぁ。
まさかまだ11時にもなっていないのにヒロトがお日さま園に帰っているなんて。
「仕事が予定より早く片付いたんだ。それと、明日は休日になったんだよ。」
『お疲れ様。それじゃあ明日はゆっくり休めるね』
言うと、ヒロトが私の腕を掴んで一緒にベッドへ転がった。二人分の体重が乗っかったベッドが軋む。
急にどうしたの、と問えば「イチャイチャしたい」となんとも恥ずかしい答えが返ってきた。聞かなきゃ良かった。
「 こうやってナマエ に触れてちゃんと会話するのなんて3日ぶりだよ。」
『しょうがないよ、最近忙しかったんでしょ?』
「まぁね。それにしても3日もよく我慢できたなって思うよ」
そう愚痴をこぼすヒロトの頭をゆっくり撫でる。ヒロトの言う通り、3日も我慢した。たかが3日だけれど大好きな人にこうして触れられないのは辛い。
『えらいえらい。』
「 ナマエ〜…」
私の名前を呼んで抱き締めるヒロトをそっと抱き締め返す。
『私だってずっとこうしたかったよ』
そうこぼすとヒロトが軽く触れる程度のキスをくれた。久しぶりのキスに心が満たされる。
「えらいえらい。」
愛おしそうに私の頬を両手で撫で回すヒロトに私も同じようにして返した。
ヒロトのほっぺ柔らかい。
『ねぇ、』
「ん?」
『なんか話して?』
私の唐突なお願いにヒロトは嫌な顔一つせず了承してくれた。
「そうだな.....あ、そういえば今日は緑川が…」
ヒロトが話す声を聴く。
ヒロトの口から発せられる低音が耳に心地いい。私は小さい頃からこの声が好き。落ち着く。
「…それでね、」
『...............』
「....って、 ナマエ?眠いのかい?」
ヒロトの問いで私は手離しかけた意識を取り戻した。
『…ヒロトの声、好き。落ち着くの』
「そう。ありがとう」
ふっと微笑んだヒロトが額にちゅっと口付けた。
「それじゃあ ナマエ が眠るまで俺が子守唄の代わりに何か話してるから」
『いや、それはさすがに...ヒロトの方が疲れてるだろうし...』
大丈夫、私がそう言うとヒロトはにこっと笑う。
「遠慮しないで。 ナマエには明日たっぷり俺に尽くしてもらうから」
『何それ!?何させる気…!?』
焦る私を優しく、強く抱き締め直すヒロト。安心して、といたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「マッサージ1時間」
『1時間も…!?』
長すぎだと思うんだけど、抗議するも軽く流された。
「さ、目を閉じて?」
耳元でそう囁かれてくすぐったさに身をよじる。
『ヒロト…』
「なに?」
優しく放たれる言葉と私の大好きな声が眠気を誘って仕方ない。
『おやすみなさい』
「うん。おやすみ」
そう言ってヒロトは私が眠るまで雑談の続きを始めた。
歌は歌わないけど、私にとってはその声が発せられるだけで子守歌になる。
意識がなくなる直前まで私はその心地良い音に集中した。
おやすみ、ヒロト。





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ヒロトの声が好きです。



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