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□抱きしめて
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ドガーンッ、轟音が鳴り響く。
今私達のチーム、アンリミテッドシャイニングのキャプテン白竜が化身を出す特訓をしている。
マネージャーの私がチームの皆に出来るのは応援することと、怪我の手当てなど。特訓をしている彼らは体をあちこちにぶつけたりして見ていてとても痛々しい。そんな彼らの怪我や痣が早く治りますように、そう思いを込めながら私は丁寧に治療をするのだ。

白竜がんばれ、そう呟く。それが聞こえてか、たまたまか、白竜は一瞬こちらを見て微笑んだ。
そんな顔されるとときめくからやめてほしいなぁ。顔がニヤけてしまう。
どうしたのか、いきなり白竜の動きが先程とは比べものにならないほど良くなっていて、背後からは化身が出ていた。うわ、すごい…かっこいい。
化身をやっと出すことが出来た彼の顔はとても活き活きしていて自信に満ち溢れていた。


今日の特訓も終え、辺りが暗くなった頃に私は白竜と外でお喋りタイムをする。いつも練習の後はこうして二人きりの時間を過ごす。
『おめでとう、白竜!』
「ああ、遂に化身が出せた。」
これでまたひとつ究極に近づいた、白竜は確かな確信を持った声色でそう言い、嬉々とした笑顔を見せてくれた。
その顔を見つめているとポンっと頭に手を乗せられた。
『 ? 何…… 』
不意に唇に柔らかい感触。感じた瞬間それはすぐ離れた。
『……白竜…… 』
「ナマエの声が聞こえた、がんばれと…」
そう言う彼の表情はいつもより優しくて柔らかだった。
「化身が出せたのはお前のお陰でもある。ありがとう」
白竜がこんなに素直にお礼を言うなんて…。相当嬉しかったんだなぁ。ふふ、なんか可愛い。
『応援するのは当たり前だよ、私はマネージャーだし。何より白竜の彼女だし』
言い終えた瞬間、白竜が啄むようなキスをくれた。やはり相当嬉しいようだ。
『今日は甘えてくるね、どうしたの?』
私はそっと白竜の手に自分の手を重ねる。そこで彼の手が震えていることに気づいた。
「……嬉しいんだ。やっと、化身が出せて……、これでまた強くなったかと思うと…… 」
うん、分かるよ。誰よりも近くで見てたから。あれだけ傷だらけになりながら頑張ってたもんね。私も自分のことみたいに嬉しいよ。
「ナマエ、ひとつ頼んでもいいか……?」
『うん、いいよ』
抱きしめてくれ、弱々しく白竜が言う。先程まで自信に満ち溢れていて言葉もしっかりしていたのに。本当に良く頑張ったね。
私は何も言わず白竜を抱きしめる。どんなに強くても白竜だって人だ。あんな特訓を毎日していたら体だけでなくメンタルにも相当負荷が掛かる。そんな事をやり遂げただけでもすごい。
それでもここからがスタートなんだ。化身を出せた事はスタートラインに立ったということ。
私には何も出来ないかもしれないけど、精一杯応援するし味方でいるからね、そう想いを込めて抱きしめた腕に力を入れると白竜の腕が私の背中に回って抱きしめ返してくれた。
『辛かったよね。白竜はすごいよ。化身も出せたし、あんな特訓に耐えられたんだから。……おめでとう、おめでとう』
「ああ、ありがとう」
涙は見せてくれないけど、こうやって抱きしめることで白竜が弱さを吐き出せるのなら何時まででも、何時でもするよ。力いっぱい抱きしめるよ。

おめでとう、白竜。
また明日から一緒に頑張ろうね。



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