short

□アイコンタクト
1ページ/1ページ



この頃、私には不思議に思うことがある。それは何故か、同じクラスの風丸とよく目が合うということだ。今だって視線を感じて右を見ればパチリと目が合う。とくに目が合ったからといって何がある訳でもなく自然に逸らされるだけ。
友達が言うには、風丸はルックスも良く、性格も良く、頭もいいし、運動神経も良い、と完璧人間なのだそうだ。それ故、女子から物凄い人気らしい。私はそういうことには疎いから友達に聞くまではクラスメイト程度にしか思っていなかった。しかしよく見れば確かに綺麗な顔立ちをしている。

風丸に興味を持った私は、彼を観察していた。しかし、変わったことはない。授業は真面目に聞き、休み時間は友達と話し、部活では後輩に慕われ、帰りに部活仲間とラーメン屋へ行く、という普通の中学生。

今日もサッカー部を覗いて行こうかな。
風丸を観察している内にちょっとずつサッカーへの興味も出てきた私は、放課後はこうしてグラウンドで練習をするサッカー部をながめている。
う〜ん、今日もかっこいいなぁ。誰が予想しただろうか。私が風丸一郎太の事を好きになるなんて。
こうして観察している内に彼のことを好きになってしまったけれど、そもそも最初に興味を持った時点でもう決まっていたのかもしれない。

休憩に入った風丸と目が合うと心臓が跳ねる。好きになる前まではこんな事なかったのに変わるもんだなぁ。
そういえば彼は女子が苦手らしい。あれ?女子が苦手なんだっけ?……違う、恋愛に関しては駄目なんだ。モテるくせにシャイなんだ。
ん?え、何か風丸こっちに来てないか?うわ、それはヤバい。逃げよう、そう思った時には目の前に風丸が立っていた。速すぎない……?
「なぁ、」
そう声をかけられて体が固まった。教室でもあんまり話したことないんだよ私。
「いつもサッカー部の練習見てるだろ?」
『あ、うん。』
「サッカー、好きなのか?」
『だんだん好きになってきた…かな』
そう答えると彼が安堵の表情を浮かべた。
「そうなのか、良かった。だったらマネージャーやらないか?」
良かった?ていうかマネージャー!?
マネージャーって、もう既に三人も居るのに、そう言えば風丸は困った顔をした。
「まぁそうなんだけどさ、人数なんて関係ない。サッカーが好きなら何人でも大歓迎だ。…って誰かさんの熱血が移っちまったな」
優しい表情をして風丸がそんなことを言っている。私はと言うと突然のお誘いに驚きと嬉しさで答えが言えずに固まっていた。
目の前の風丸を見るとお願いします、と言う言葉がついつい出てしまっていた。
言ってしまったよ。
「良かった……」
『え?』
これからは遠慮せずにミョウジを見れるな、そう風丸が胸を撫で下ろした。
いや、待って下さい。それどういう意味ですか、そう思っているとしっかり合わされた風丸の瞳が鋭くて真っ直ぐで熱くていつもとは全く違う瞳をしていた。
その視線に耐えられなくなり顔を背けると少し笑いながらかわいいな、と風丸が言っているのが聞こえた。
一気に顔が熱くなってボンッと音を立てて爆発した。勘弁してください。
誰だよ風丸一郎太がシャイなんて言ったのは。



ーーーーーーーーーーーーーー
リクエストでした。

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ