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□知らない気持ち
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私のクラスには雨宮太陽という男の子がいる。その子は病気で入院中の為、学校にはあまり来ていない。そして、今私は太陽くんのいる病院にいる。学級委員の私は先生に頼まれてよく病院にプリントなどを届けに来るのだ。
太陽くんはサッカーが大好きでサッカー部に所属していてしかも、物凄く上手いらしい。でも、病気のせいで激しい運動が出来ずサッカーもまともに出来ないのだとか。


目の前の雨宮太陽の字を確認してから二回ノックをしてドアを開けた。窓の外を見ていた太陽くんがパッと明るい顔でこちらを向く。
「ナマエさん……!」
『こんにちは。えっと、今日もプリント渡しに来たよ』
そう言って先生に預かったプリントを太陽くんに渡す。彼はそれをありがとう、と言って丁寧に受け取った。それから、学校でのことを伝える。
最近の行事、勉強内容、クラスの様子等を私が話してる間、太陽くんはずっと笑顔なのだ。名前の通り太陽のような笑顔。私はいつもその笑顔が眩しくてまるで外に居るかのような感覚になる。今日も眩しいなぁ。


ふと時計を見ると、もう6時になりかけていた。
『それじゃあ、私そろそろ帰るね』
そう言って歩き出した けど、それは腕を掴まれて出来なかった。太陽くんを見ると、彼はさっきまでとはまるで違う真剣な顔をしていた。今まで見たこと無いような表情にドキドキと心臓が脈打つ。
「……僕の話を聞いて」
私は黙って頷く。
「僕………ナマエさんが……好きなんだ」
…え?え?な、何がどうなってるんだろう…。あの太陽くんが…私の事を?
いきなりのことで頭と心臓がパニック状態だ。
「だから、僕と付き合って下さい」
太陽くんの瞳が真っ直ぐに私を捕らえた。笑顔の時とは違う眩しさと熱さ。そんな彼の表情に私の顔の熱と心臓の動きが増した。
『私は……その……』
「正直な気持ちを聞かせてよ…」
私の、気持ち……それは、
『分からない……でも、太陽くんの真剣な表情にすごく心臓がうるさくて…。今、の言葉にだって…ドキドキして胸がきゅっとして。……何か、よく分かんないんだけど…』
その言葉を待ってたみたいに嬉しいの、そう言うと彼はあの明るくて眩しい太陽のような笑顔を私に向けた。
その光を向けられて思わず目を細めた。
「そっか! じゃあ、そのうち分かってくるよ。それまで僕……待ってるから」
太陽くんのその言葉の意味はいまいち分からなかったけど、この胸の高鳴りを知りたいと思った。

この感情は何だろう。


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