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□スキあり!
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練習が終わると私たち雷門サッカー部の用事がない人達皆で雷雷軒へ行く。今日も大勢で雷雷軒への道を歩いている。
「なぁ、お前何食う?」
そう聞いてきたのは隣を歩いている半田だった。
『んー、考え中……』
私と半田は付き合っている。皆それを分かっててわざと私と半田の前を歩く。そんな風に皆を前へと誘導してくれるのは豪炎寺や鬼道だ。気を使ってくれて有難い。空気の読める男はモテるぞ。
『半田は何食べんの?』
聞くと、オレも考え中と返ってきた。私達の間が少し縮まる。手を繋がずに距離だけを縮めるのだ。肩が触れそうな距離。
先日、手を繋いでいるとマックスにからかわれた。シャイシャイボーイな半田くんはもう皆の前では手繋がない、と宣言したのでそれからは二人きりの時だけ繋ぐようにしている。
私としてはどこでだって手を繋ぎたい、半田に触れたいと思ってしまう。
別に手を繋ぐくらい恥ずかしい事ではないだろうに…。ヘタレめ。そんなんだから中途半田なんて言われるんだぞ。


雷雷軒に着くと、皆が順にのれんをくぐって店内へと入って行く。私は自分と半田以外が中へ入ったのを見て一歩を踏み出した。
その時、腕が引っ張られたので振り返ると何やら唇に柔らかい感触のものが一瞬触れた。
いきなりの事で、一瞬の事で何が何だか分からず半田を見つめると彼はニカッと真っ赤な顔ではにかんでみせた。
「スキあり!」
そう言って半田は店の中へと入って行く。私はというと、しばらくその場から動けなかった。が、その内何をされたのか理解していき嬉しいやら恥ずかしいやら悔しいやら。
顔が熱い。半田のクセに…。半田のクセにあんな事するなんて反則だ…。
ファーストキスなんだからもう少し雰囲気ある時にやったらどうなんだ。
そう思いつつも自分の口角が上がっていくのが分かる。
雷雷軒へ入るとまだ顔が赤い半田にバカ、と言われてどつかれた。
どうやらニヤニヤしてしまっていたらしい。



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